お風呂
最近の朝の冷え込みは強烈だ。学校の制服をスカートにしようといった人たちにもスカートを履いて冬を過ごして欲しいくらいだよ。冬の寒さというのを全然理解していないんじゃないかな?
学校まで歩く道で、身体はすっかり冷えてしまう。そして、そのまま教室へ入れば暖かくなるということも無い。教室はすべての窓が少しづつ開いていて、外気温と同じ温度をしているのだ。
コート姿の友達もちらほらと目に入る。ここは、極寒の地方なのかなとか思っちゃうけれども、日本国民が多く集まる関東。標準的な気温の地域でこれだから、どうにもやってられない。
「換気が必要だ」と言って、教室の窓が開けられるのだけれども、冬にそれをやるととても寒いのをわかって欲しい。ましてや、私は窓際の席なのだ。
席に座って縮こまりながら隣の席のちーちゃんに話しかける。
「ちーちゃん。今日も、とっても寒いね……」
「そうだよね、特にその席。寒いでしょ?」
私のことを気遣うように優しい声をかけてくれるちーちゃん。表情からも、私を心配してくれているのが伝わる。親身になってくれる友達の暖かさに触れて、少し寒さが和らいだ気がした。
「うん。ありがとう」
お礼を言うと、ちーちゃんは何かを思いついたように人差し指を顔の横に、ひょこっと出した。
「そうだ! 寒いときは暖かいものの話をすると良いっていうんだよ。夏に怪談話をするみたいにさ、冬には暖かいものの話をしたら心が温まるのです!」
ちーちゃんは自信満々にそう言った。眩しい笑顔を輝かせている。「本当なんだよ」っていうことが、ひしひしと伝わる。ちーちゃんはそもそも嘘つかないもんね。
「じゃあ、暖かいものの話をしよう。うーんと、コタツってやっぱり暖かいんだよね」
「わかるわかるー! その暖かいコタツの中で食べるアイスが何とも冷たく感じられて美味しい!」
「そうそうそう! 冷たいの良いよねー」
二人の頭上には同じ絵が浮かんでいることだろう。
ただ、私は気づいてしまった。
「……ってこれ、アイスの話じゃん。冷たいものの話になっちゃってるよ!」
「ありゃ? なんか間違えちゃった?」
ちーちゃんは首を傾げる。
純粋で、とっても可愛いのだけれども、ちょっと天然系なところもある。見ているだけで癒される気がするけれども、暖かいのをお願いしたいな。
そう思っていると、何かを思いついたように、また人差し指を顔の横にひょこっと出した。
「暖かいと言えば、お風呂とかもあるよね!」
「お風呂かぁ。そうだよね、確かにお風呂は暖かいよね。リラックスもできるしいいよね。私好きだよ!」
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