電車の中のストーブ

「今日は、二十四節気の一つの『小雪』です」


 テレビを付けると朝の天気予報が映し出された。いつも見ている朝のチャンネルだった。そのままリモコンを置いて食パンへと持ち替え、頬張りながら何気なく眺める。


「立冬から一つ分季節が進んで、冬が深まってますよね。今日はとても寒いです」


 そう言うお天気キャスターは、コートを羽織っていてマフラーまでしている。今日ってそんなに寒いのかな。家の中にいる分には全然感じない。

 部屋には暖房がついており、猫みたいに暖房とコタツで温まりながら、朝のひと時の幸せを感じていた。暖かいっていうだけで、人間は幸せを感じられると論文でも書いて発表してみようかなー。



「風も冷たいのでね。防寒対策はバッチリしてにして、お出かけ下さ……」


 お天気キャスターがそこまで言ったところで、テレビの電源が消されてしまった。リモコンを持っているのは母だ。顔色は怒っているようだった。

 リモコンを机に戻すと、私の近くで話し始めた。


「今日も学校あるでしょ! こんなにゆっくりしている場合じゃないじゃない。早く準備して行きなさい!」

「はーい」



 ◇



 天気予報で言っていた通り、外はとても寒かった。防寒対策をしてきたけれども、少しだけ出ている私の肌を冬の風が冷やしていく。スカートとハイソックスの間の領域が私のウィークポイント。

 秋はまだ来ないのかなと待っていたと思ったら、いつの間にか冬になっていたらしい。秋という季節が夏に乗っ取られたけれども、冬は順調に始まっているみたいだ。


 駅まで歩くと、待ち合わせていた朱里が手を振って私を待っていた。


「遅いよー! 寒い中待ったんだよー!」

「ごめんごめん。寒いのは私も一緒でさー。どうにも足が前に進みたがらなくってね」


「言い訳は良いから、後でココア奢ってね」

「……うい」


 ホームへ上がると、さらに寒く感じた。風が吹き晒しになっていて、電車が通過するしないに関わらず風が吹いてくる。


「女子ってさ、なんで制服はスカートなんだろうね。寒くない?」

「それは可愛いからじゃないかな?」


「いやー、可愛いのも良いけど、寒いのをどうにかしたいよ」

「そうだったら、ジャージ履くしかない」


「うーん、それはちょっとなぁー……」


 そんなやり取りをしていると、電車がホームへやってきた。


 降りる人もみんなコートを着て、冬支度ができているようだった。冬が始まったなとあらためて実感する。


 電車へと乗り込んで、椅子に座ると足元がとても暖かかった。


「冬って言ったらこれだよね」

「確かに」


「生足だと、もっとあったかく感じられるかもだよね」


 私は、この電車の中のストーブが好きだ。

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