のど飴
一昨日はとても暑くて、友達同士で「季節外れだね」なんてことを言い合っていた。
そこから一転して、昨日はとても寒かった。それもそのはずで、木枯らし一号が吹いたらしく、11月下旬や12月くらいの気温だと天気予報で言っていた。
かと思えば、今日はまた暑いらしい。テレビの中の天気予報士が明るい声でそう告げていた。
「季節の変わり目は、寒暖差が激しくなるのでね。体調崩さないように気を付けてくださいね!」
最近の天気ってどうなっているのかよくわからない。天気予報が嘘をついているっていう訳ではないけれども、朝夜の寒暖差ってこんなに激しかったものかと感じてしまう。
転移予報士の声を後ろにして、制服へと着替えて学校へ行く準備をする。
「暑いって言われてる日でも、朝だけは寒かったりもするんだよね。どっちに合わせるのがいいんだか……」
悩んだけれども、結局は寒い方に合わせてセーターを着ていくことにした。
準備を済ませて暖かい恰好で家を出ると、外の気温はちょうど涼しく感じられて、私の選択は正しかったと確信が持てた。
◇
しかしながら、学校へ向かう道を歩いていると段々と暑くなってきた。急に太陽が出て来たと思ったら、強めの日差しが降り注いでくる。それに加えて、学校への坂道を歩いていることで、体温も上がってくるようだった。
着てきたセーターはすぐには脱げないため、暑いけれども我慢して歩く。しょうがないので、腕だけをまくることにした。そんな風にして、体温調整するしかなかった。
学校へ着くころには汗もダラダラ掻いていたが、学校の中の温度は少し肌寒いくらいであった。掻いていた汗が急激に冷えて来るのが分かり、段々と寒く感じてきた。
「一日ごとの寒暖差とか、一日の中での寒暖差っていうよりも、学校の着くまでで寒暖差が激し過ぎるよ……」
そんなことを思って、教室へとつくころにはすっかり身体が冷えていた。
「――へっくちゅん!」
やっぱり、寒い……。セーターを着ていたとしても、中から冷えてしまったら効果が無い。
「これは、寒暖差がありすぎて風邪ひくでしょー。あぁー……、なんだか喉痛くなってくるかも……」
そう呟いたら、隣の席の山田が手を差した出してきた。手にはのど飴の袋を持っていた。
「これ、食べる? 意外と甘くて美味しいよ」
男子から甘いものをもらうなんて、ちょっと気が引けてしまったけれども、風邪の引き始めが肝心って言うしなー……。
私は、山田の差し出してきた袋から、一粒のど飴を取り出すと、口の中に放り込んだ。そうすると、すぐに口の中に甘味が広がった。
「どう? 甘くて良いだろ? 喉良くなった?」
「甘いけど……。そんなすぐ良くなるわけないじゃん。まだ全然溶けてないもん」
「あ、そうか。ごめんごめん」
山田から甘い対応をされて、すぐにでも溶けちゃいそうな気分だけれどね……。ふふ。
「けど、これ美味しいよ。こののど飴好きかも!」
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