チーかま

 放課後、私は定期テストの勉強のために部室へと急いだ。最近は気温の乱高下が激しくて、昼間は暑かったり夜は寒かったりと、季節感がおかしいのだけれど、テストは容赦なくやってくる。テストだけが規則正しく季節を告げてくれるなんて、ありがたくないけれども。


 重たいカバンを背負いながら、今年はどうしてこんなに急に気温が変わるんだろうと思いながら、校舎を歩いた。



 部室に到着すると、すでに何人かの部活仲間が集まっていた。机の上には教科書やノート、そしてお菓子の袋が散らばっている。テスト期間に入ると、部活は一週間ほど休みになるから、こうして勉強するしかやることが無いのだ。


「今日は一日ここで勉強しようね」


 友達の亜美が声をかけてくれた。私は微笑みながら、カバンから教科書を取り出して机の上に広げた。これからの数時間、私たちはお菓子をつまみながら勉強することになる。


「お菓子、持ってきた?」と亜美が尋ねてきたので、私はカバンからチョコレートやガムを取り出して見せた。みんなもそれぞれ持ち寄ったお菓子を並べて、少しずつシェアしながら勉強を始めた。


 しばらくして、ふと隣の席を見ると、友達の涼が何かを取り出して食べていた。「何それ?」と尋ねると、涼はにっこり笑って「チーかまだよ」と答えた。


「えっ? お菓子をシェアすると思ってたのに、チーかまを持ってきたの?」


 私は驚いた。涼が持ってきたのは、見慣れたチーズと魚肉のスナックだった。


「これ、美味しいんだよー! 騙されたと思って一つ食べてみてよ!」


 涼に勧められるままチーかまを食べてみると、その独特の風味が意外と美味しくて、びっくりした。何気なく食べ始めたけれど、その味わいが心に残った。私は思わず笑みを浮かべながら、「意外といけるね」と言った。


 そして、チーかまを食べながら勉強していると、なんだか集中力が増した気がした。涼も亜美も楽しそうに話しながら勉強していて、部室全体が明るい雰囲気に包まれた。お互いに教え合ったり、問題を出し合ったりして、時間が経つのも忘れてしまうくらいだった。


「チーかまって、こんなに美味しかったんだね」

「でしょー? これ、結構おすすめなんだよ」


 私がしみじみ言うと、涼は得意げに答えた。


 その日の勉強会は、チーかまのおかげで楽しい時間となった。季節感のない気温やテストのプレッシャーにも負けず、私たちは仲間と一緒に過ごすことで、笑顔に包まれていた。


 今後も、チーかまがテスト勉強のお供になるだろう。そう思って、チーかま片手に持ちながらペンを握ると、涼と亜美に笑われてしまった。

 そんなことをしながら、今日もまた部室での時間を楽しんだ。


 チーかまって、好きだな。

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