ポッキー

 女子高生は、一般的に言われるようにおしゃべりが大好き。例外なく、もちろん私も大好き。誰かの噂話なんてあったら、ずっと喋ってられるかもしれない。


 うちの高校は、毎週水曜日は授業が一時限分短いのだ。その代わりに自己学習をしろと言う方針になっている。

 各教室と学習室が解放されて、そこで自分の得意とする内容でも苦手とする内容でも、好き好きに勉強する時間となっている。

 帰っていいというわけじゃなくて、学校の中で好きな勉強をしろと言う時間。生徒の自主性を尊重しつつも、勉強が生徒の本分となっていることを思い知らされるような時間だ。


 その時間は、私も友達と勉強をすることにしている。


 ただ、することにしているというだけで、実際に勉強が進むかと言うと、ついつい噂話に花が咲いてしまうのだ。


「えー、由紀子って、そうだったの? 二組に悠斗君と付き合ってるの?」

「良い感じなんだったら、早めに教えてよー! そうしたら、授業中チラチラ眺めるのにー! 悠斗君、よく授業中にメール打ってるんだよ?」

「まさか、授業中も連絡とり合ってるの!? うらやましっ!!」


「そういうのが恥ずかしいから、言わなかったんだよー。もうー!」


 由紀子は、顔を赤らめながら手で私たちを叩くふりをする。幸せだという気持ちが、顔全面に出てしまっている。


「「ははははー」」


 全然勉強は進まないのが通例だ。


 また違う話題を、春美が始める。


「そう言えば今日って、ポッキーの日じゃん? ちゃんとポッキー持ってきたんだ! みんなで食べよ食べよ!」


 そう言って机に袋を開け広げると、みんな一斉に取って食べ始める。

 ポリポリとチョコの付いている方からゆっくりと食べ進める。


 由紀子だけは食べ方が違って、真ん中あたりでポッキーが折れてしまっていた。


「そうそう、こうやってポッキーを割ってね。好きな人に半分あげると恋が叶うらしいよ!」

「何その迷信?」

「そんなので彼氏ができたら、誰も苦労していないよ」


「けど、私はこれで悠斗君と付き合うことになったんだ」


 由紀子の言葉に、皆からの批判の声が一斉に止んだ。

 誰からともなく、新しいポッキーを手に持つと、口でぽきっと半分に折っていた。


「面白い食べ方するね? どうしたの?」

「えー? みんな同じ食べ方だよ? 普通鋼食べるよね?」


 そんなことを言いながら私もポッキーを半分に折って食べる。


「こんなので、好きな人とくっつくなんてあったら、ポッキー凄すぎだよー」



 後ろに姿勢を逸らせた瞬間、通りかかった宮園君と目が合った。


「おっ、ポッキーの日にポッキー食ってんの? 良いじゃん、一本分けてよ!」


 驚いて目を丸くしながら宮園君を見て、周りの友達を見た。友達も私と同じく目を丸くしていた。


「あ、は、はい。あげる……。食べかけでも良ければ……。私、ポッキー好きだから、半分だけならあげるよー」

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