オルゴール

 私は中学から吹奏楽をやっている。高校に入っても同じく部活動に勤しんでいた。

 中学よりも高校の方が求められる演奏レベルが高く、厳しい練習は毎日続いている。先生は厳しく、先輩たちも私たち後輩に対して容赦なく当たってくる。特に最近の練習では、先生の強い指摘が私の心に刺さる。


「もっと集中して! その音じゃダメだ!」


 先生の声が鋭く響き渡る。それに先輩たちも続けて言ってくる。


「もっと練習しろよ」

「今まで何やってきたんだ?」


 そう冷たく言い放つ。毎日がその繰り返しだ。


 そんな日々が続く中、私は部活を続けるかどうか悩み始めた。音楽が好きな気持ちは変わらないけれど、この厳しい環境に耐え続けることができるのだろうか。心が折れそうになるたびに、自問自答する。


 ある日、部活の練習が終わり、私は練習室の片隅で一人、静かに考えていた。そんな時、友達の亜美が近づいてきた。


「ねえ、これ忘れ物かと思って持ってきたんだけど。昨日、教室の隅に落ちてたんだ」


 亜美は小さな箱を取り出した。


 その箱には見覚えがあった。亜美と一緒によく聞いたオルゴールだった。どうして落ちてたんだろうと思っていると、亜美はオルゴールの蓋を開けた。

 箱から優しい音色が響き渡る。昔、二人で聞いたあのメロディーだ。その音が耳に入った瞬間、懐かしい気持ちが胸に広がった。


「あの時も、こんな感じだったね」


 亜美は微笑んで言った。


「うん、本当に懐かしいね」


 私も微笑んで答えた。その瞬間、私の心の中で何かが変わったような気がした。


 あの頃、中学校最後の演奏会の前にも、こんなことがあったのだ。その時も、亜美が励ましてくれていた。

 音楽が私たちを繋いでくれた。オルゴールの音色は、私たちの友情と音楽への愛を思い出させてくれた。懐かしさと共に、その音楽が好きだった気持ちが蘇った。


「また、頑張ろうよ」


 亜美は優しく言った。その言葉に、私は力をもらった。厳しい練習や先生の言葉が辛いと感じることもあるけれど、それでも音楽が好きだという気持ちは変わらない。


 オルゴールの音色に包まれながら、私は心を新たにした。部活を続けることで得られるものはきっと大きい。それを信じて、もう一度頑張ろうと決意した。


「うん、一緒に頑張ろう」


 私は亜美に微笑んだ。オルゴールの音色は私たちの心をつなぎ、再び前を向く力をくれた。


 オルゴールの優しい音色に包まれながら、私は未来への希望を感じた。この音色があれば、どんな困難でも乗り越えられる気がした。


 魔法の音がするオルゴール。

 私を前に進ませてくれる、大好きなオルゴール。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る