推し活

 最近、『推し活』というのを始めた。

 私の好きなアニメのキャラクター。『歌の王子様』っていうアニメに出ている十本木じゅっぽんぎ君。赤い色を基調としたキャラクターで、燃えるような熱い性格が特徴。


 ライブが中止になっちゃったり、大変な状況になったとしても、グループメンバーを鼓舞して元気づける姿が私に刺さった。そこから、私の中で最推しは十本木君。アニメを見ても赤色だけしか目に入らない。


 文房具も赤ばっかりにしてしまっている。

 筆箱も、シャーペンも、赤ペンも。何でもかんでも、赤にしている。


 授業終わりに、赤色が閉まっているとあおいに話しかけられた。


あかね! 今日買い物行こう!」

「いいよー! どこ行くの?」


「ショップに行こう!」


 葵は笑って言ってきた。

 ショップというのは、私たちだけに通じる暗号みたいなものだ。私と同じように、葵もまた同じアニメにハマっているのだ。

 私は二つ返事で了承する。


「いいよ! 放課後になったら行こうね!」



 ◇



 放課後、私と葵はショップへと向かった。

 ショップとは、アニメショップだ。


 学校帰りの横浜駅へ続く道。

 最近移転したアニメショップが入るビルがある。私が中学生のころは東口にあったのだが、最近西口の方へと移動してきた。学校帰りに行けるところにあるからとても便利になった。

 入りやすくなったし、お店も綺麗になったから移転は大成功だって思う。


「感謝のお布施をしなきゃいけないね」っていうのは、私と葵がアニメショップに行くときの口癖になっているくらい。私たちはありがたがっていた。


 早速、アニメショップへ着くと私と葵はにやけ始める。お互いに顔がにやけているのを見合って頷きあう。そんな行為さえも楽しく思えてしまう。


「葵は、今日は何を買う予定なの?」


 私が話しかけると、葵は待ってましたとばかりに話始める。


「私は聖空ひじりそらさんの新作CDを買うために来たんだよ! もちろん茜も知っていると思うけれども、アプリ内で宣伝されていた、あの歌がCD化されたんだよ! もちろん予約したから取り置きはされているんだけれども、推しだったらもちろん発売日に来るものだよね!」


 葵は早口で言うと、興奮して瞳孔が開いているように見えた。

 気持ちはすごくわかる。私も、十本木君のCDが出た時に同じことをしていた記憶がある。それだけ、推しが好きで、推すこと自体にハマっているっていうことだと思う。


 私は、葵の思いに共感してもう少し話を聞いてあげることにした。


「推しのCD発売日って良いよね。推してて良かったーって思う。推し活大好きだーって。やっぱり、推し活って最高だと思うよね!!」

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