ウェットティッシュ

 私が大好きなポテトチップス。

 特にうすしお味が好き。のりしおだと、海苔の成分が少し余計な気もするんだよ。

 かといって、コンソメパンチとか暴力的な味に感じてしまう。


 うすしおって、自ら『薄い』っていうあたりが、なんだか奥ゆかしくて、そういうネーミングさえ、いとおしく感じてしまう。

『私が考える最強のフルコース』なんていうものがあったとしたら、ポテトチップスのうすしは必ずランクインすると思う。



 そんなうすしおのポテトチップス。

 私と部活のメンバーで一緒に食べる習慣がある。


 毎週月曜日の放課後、部活が休みの日には部室に集まってダラダラ過ごすというのが、バスケ部の行事になっている。

 これもチームワークを高めるための一つだと言いながら集まる。そして、みんなで持ち寄ったお菓子を食べるのだ。

 ただのお菓子を食べたいための言い訳に聞こえるかもしれない。言い訳であることは、否定派できないけれども。


 今日も部室に来てみると、先にチームメイトたちが集まっていた。

 その中の一人である早紀と目が合うと、にこりと微笑んで、手に持っていたお菓子の袋を勢いよく開けた。


「遅いよ、綾! 先に食べちゃおうかと思ったんだよ?」

「ごめんごめん、帰りのホームルームが長くてさ」


 私が荷物を置く間に、早紀はパリパリと音を立ててお菓子を食べ始める。


「んもう。言い訳は無しだよ。早く食べようよ!」

「ごめんってばー。今日は、何のお菓子食べてるの?」


「今日はね、ピザポテトだよ。何だか寒くなってくると、食べたくならない?」

「その気持ちには、あまり同意できないけれども。また、ハイカロリーなもの選んできちゃってー……」


「いいじゃん、美味しいよ? ほらほら、食べてー?」


 早紀が袋を差し出してくる。匂いからして美味しそうだ、袋の中から一枚とって口へと運ぶ。

 すると、すぐに濃厚なピザの味が口いっぱいに広がった。



「うん。美味しいのは知ってるけどね。私は、うすしおを食べようと思ってたんだよ」

「絞ってば、いっつもうすしおじゃん。飽きないの?」


 私は頷くと、カバンの中からポテトチップスのうすしお味を取り出した。そして、それと一緒にウェットティッシュを取り出した。


「絞って、気が利くよね。いつもウェットティッシュ持ってきてもらっちゃって、ありがとうね」

「そうそう、特にピザポテトなんて手がベタベタになるんだからさ。必要だよね。遅くなったお詫びで、みんな使ってー」


「ありがとう!」


 お菓子を食べるのも好きだけれども、その時のエチケットとしてウェットティッシュを用意する。

 これがあれば、多少の遅刻は許されるんだ。


 みんなそれぞれ、ウェットティッシュを一枚とってから、お菓子をパクパク食べていく。

 私たちをつなぐ絆の一つ。ウェットティッシュ。


 そう考えると、好きかもな。

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