テディベア

 久しぶりに母と一緒に大きな倉庫型スーパーに来た。ここは何でも揃うし、季節を先取りした商品が並んでいるので、いつもワクワクする場所だ。

 まだ10月だというのに、店内はクリスマスの装飾品やグッズで溢れていた。


 入り口を入ると、まず目に飛び込んできたのは巨大なクリスマスツリーだ。光り輝くオーナメントや色とりどりのリボンがつけられており、その豪華さに思わず目を奪われた。ツリーの下にはサンタクロースやトナカイの置物も並んでいて、まるでおとぎ話の世界に迷い込んだような気分になる。


 母と一緒にカートを押しながら、クリスマス関連の商品を見て回る。小さなキャンディケインや、クリスマス柄のペーパータオル、可愛らしいクリスマスカードが並んでいて、その一つ一つがキラキラ輝いて見えた。


「このリース、すごく素敵じゃない?」


 母が言いながら、緑の葉っぱに赤いベリーが飾られたリースを見せてくれた。


「うん、すごく可愛いね!」


 見ているだけで楽しい時間が流れた。

 そうしているうちに、おもちゃコーナーに差し掛かる。そこには様々なぬいぐるみが並んでいたが、その中でもひと際目を引いたのが、大きなテディベアのぬいぐるみだった。


 そのテディベアは私の腰ほどの高さがあり、ふわふわとした毛並みがとても心地よさそうだった。目は大きくて優しい表情をしており、その姿に思わず笑みがこぼれた。私はそっとテディベアの手を触れてみた。その柔らかさと温かさに、まるで友達に触れたような気持ちになった。


「このテディベア、すごく可愛いね」


 母に言うと、母も笑顔で頷いた。


「買おっか!」


 少し迷ったが、結局そのテディベアをカートに入れることにした。家に帰ってから、私はテディベアを自分の部屋に置き、しばらくその姿を眺めていた。その優しい表情を見ていると、自然と心が穏やかになる気がした。


 実は、私は小さい頃からテディベアが大好きだった。家には色々な種類のテディベアがいて、それぞれに名前を付けていた。この新しいテディベアも、もちろん特別な名前を付けて大切にすることに決めた。


 帰りの車で、後ろの席に乗り込むとテディベアを乗せた。私はそれを抱きしめながら帰ることにした。ふわふわとした感触が、安心感を与えてくれる。まるで、このテディベアが私を守ってくれているような気がしたのだ。


「テディベアって、本当に不思議だよね」


 どんなに疲れていても、このふわふわとした存在がそばにいるだけで、安心して眠ることができる。


 帰りの車で、私は寝てしまったようだ。

 起きると、横にテディベアが居た。これからも、私のそばにはこのテディベアがいる。どんな時でも、その優しい顔を見れば、きっと心が温かくなるだろう。


 テディベア、好き。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る