パスタ

 学食に行くと、既に行列が出来上がっていた。


 今日は、パスタの日だからパスタ大盛りのサービスなのだ。

 同じ値段で量が多くなっているのだから、これは食べるしかない。そう思って彼氏の和也を連れて食堂へ来たのだが、待ち時間はいつもより長そうだ。


 並んで待つ間、一人じゃなくて良かったと思いながら彼に話しかける。


「パスタの日っていうから、すごい混んでいるね」

「ああ。何でこんな混む日に連れてこられたんだか」


「まあまあ。けど、私と一緒の時間過ごせるから、嬉しいでしょ?」


 私がそう言うと、彼は顔を赤らめて下を向いてしまった。

 先制攻撃成功だね。ふふ。


 彼をからかい過ぎても機嫌悪くなっちゃうから、何気ない会話を振ってみる。


「パスタソースは何が好き?」


 私が質問をすると、なんだか彼の眼鏡が光った気がする。



「どのソースが良いかというのは、パスタの種類によって変わる」

「は、はぁ……」


 急に真面目な雰囲気を出して語りだすから、気圧されてしまった。

 彼は私の様子を気にせずに話し続ける。


「パスタは、500種類以上あると言われているんだ。麵状のものは、スパゲティと呼ばれていたりするが、太さで名前が川たりする。平麺だとフィットチーネと呼んだり、細いものだとカッペリー二と呼んだり」

「あ、フィットチーネは聞いたことあるな」


「パスタの種類もあるけれど、湯で加減についても種類がある。アルデンテ、ベンコッティ、モッリー」

「それも、アルデンテなら聞いたことあるよ?」


 彼のうんちくに対して、知っているところだけ返すけれども、どんどん知識を披露してくる。


「形状が変わったものもパスタという分類で呼ばれるんだ。マカロニ、ペンネ、ツイスト、力ール、シェルなんかがそうだな」



 そろそろうざいな……。

 相変わらず知識を披露したがりな、和也にうんざりしてくる。

 私から話を切った。


「パスタと言っても、いろいろあるのは分かった。和也はどれが好きなの?」

「それぞれに良さがあるからな。選べないなー」



 これは、うざい……。


「わかったわかった。和也は浮気性だね。好きなパスターつ決めれないなんて、優柔不断すぎでしょ」

「あ、いや、そういうわけじゃなくて……。全部が良くって……」



「迷っていたら、一番好きなものが無くなっちゃうんだからね!」

「あ、う、うん……」


「もう! 和也はいっつもそうなんだから!」


 ふふ、今日も私が口喧嘩で勝ってしまったな。



「俺は、君と一緒に食べれたら、なんでも満足するよ」

「…………へ?」



 頬を赤らめてそっぽを向く和也。


 なんということを言ってるの……。こっちまで、顔が暑くなっちゃうじゃん……!


 私もそっぽを向きながら返事をする。


「……そうだよね。和也も好きってことだね。パスタっていいよね! 私も好きだよ!」

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