アニメ

 昼食の時間。

 友達と一緒にご飯を食べるのが通例。


 みんなでお弁当袋を持って席に集まる。各々、弁当箱と箸箱を取り出して食べる準備を始める。私もお弁当箱と一緒に箸箱を取り出す。

 それと合わせて、コースターを取り出す。


「あれ、赤井さん。それってなに?」

「あ、気づいた? これね、先週コラボカフェに行った時にゲットしたコースターなんだ。可愛いでしょー」


 コースターを持ち上げて、見せびらかす。

 コースターの真ん中には大きな星が描かれており、それに寄りかかるようにピンク色の丸いキャラクターが描かれている。

 私のお気に入りのキャラクターだ。


「これが目当てで、すごい通ったんだよー。全二十種類もあってさ、なかなか出なかったんだよ。いやー、苦労したよ」

「へぇー。私たちにはわからない世界かも」

「可愛いって思うけど、そんなに苦労するものかー?」


 みんなが口々に理解ない言葉を言ってくる。

 そんなことを言われたら、反論したくなってしまう。


「これ、私の人生に絶対必要だもん! これが無いと、生きていけないんだもん!」

「ははは。そんなことないでしょ」

「ちょっと言い過ぎじゃない?」


 本気でそう思ってるんだけれども、理解してくれなかった。

 しょうがないから、私一人で愛でようかな。


 しょぼくれながら、コースターを袋にしまおうとすると通りがかりの青井くんが声をかけて来た。


「おー、赤井。そのコースター良い奴持ってるじゃん!」

「え、これ? わかるの?」


「もちろん知ってるよ。けどそれ、アニメの中じゃ、すげーマイナーな奴じゃね?」

「そうそうそうそう!! わかるの!? え、え、本当に!?」


 気付くと立ち上がっていた。

 興奮して早口になり、声まで大きくなってしまった。


「何で知ってるの? このアニメ自体、マイナーなんだよ! 良く知ってるね!」

「え、えっと? たまたまかな……?」


「そっかー、たまたまか。青井くんなら話が合うかなーって思ったんだけれども。たまたまなのかー。残念……」


 少しがっかりしながらも、興奮してしまった自分を落ち着かせようと水筒を取り出す。

 温かいお茶を飲んで、少し落ちつかないと。


 その間にも、ついつい独り言のようにつぶやいてしまう。


「アニメも供給過多で、多すぎるとは思うんだよ。けど、同じアニメを好きな人なんて、なかなか現れないんだもん。いやー、このキャラを知ってるだけでも嬉しかったなー」



 水筒を袋から出そうとすると、また青井くんが声をかけて来た。


「あ、その水筒の柄知ってるぞ。この前見たカエルのアニメの奴じゃん」

「……はっ!! 知ってるの!? 青井くん!!」



 一般的な柄をしているから、今まで誰にも気づかれたことが無かった水筒袋。


「これに気づくなんて、青井くん……」

「おう、ちゃんと全話見終わってるぜ! OVAも含めてな!」


 私は、今日運命の出会いをしたかもしれないです。


「私、アニメが好きです。青井くん。ぜひとも、お友達になってください!」

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