ゴミ拾い
街の清掃活動が学校行事に組み込まれている。
近隣住民の協力があって学校が成り立っているから、それに対する恩返しをしようということらしい。
清掃活動は制服から体操服へと着替えて行う。この時期少し肌寒いので、上下にはジャージを着用する。
右手にはゴミ袋を持って、左手にはトングを持つ。
こんな格好で、学校の近くをゴミ拾いしていくのだ。ゴミ拾いが捗りそうな見た目である。
みんな文句も言わずにやるのは、授業がサボれるということだろう。授業が休みになるのは、確かにありがたいことだ。
「それじゃあ、うちのクラスはこの辺りを掃除だ。車には気をつけること!」
「「はーい!」」
先生からの説明が終わると、早速ゴミ拾いを始める。最近では歩きタバコなんかも取り締まられていたり、制度が厳しくなっているからゴミなんてあまり落ちていないのが実情だったりする。
それでも、やる気を出した男子が率先してゴミ拾いに繰り出す。
「よし! それじゃあ、一番多くゴミ集められた奴にジュース奢りなっ!」
「良いぜ、俺もやる!」
どんな手段や理由があろうとも、慈善活動をすることは褒められることだと思う。
自分一人だけ頑張ってやるのも偉いことだけれども、みんなを巻き込んでやる方がより多くのゴミを集めることができるだろう。
遊んでいるように見えるかもしれないけれども、言い出しっぺの林田君って、意外に良いことしているんだよね。
そんなことを考えていたら、私も声を上げてしまっていた。
「林田君、私もその勝負に混ぜて」
「ほぇ……? 田坂さんもやるの?」
林田君は目を丸くして驚いていた。
おそらく、男子の友達内だけでやるつもりだったのだろう。私にが声を上げることを想像していなかったようだ。
林田君は少し黙って考えているようだったが、ぱっと顔が明るくなった。
「いいぜ! ただ、男子と女子だとハンディがいるだろ? そっちは何人かグループ組んで良いぜ!」
「グループ?」
「おう、女子が何人集まったところで、俺よりもゴミ拾えないだろうからな!」
林田君の発言が周りの女子たちにも聞こえたようで、みんな集まってきた。
「はぁー? 男子たちよりも掃除上手にできる自信あるんだけど?」
「林田なんかには、負けるわけなくない?」
「私たちが買ったら、ジュースだからね!」
「おう! かかって来い!」
林田君の挑発によって、女子たちグループも私に混じってゴミ拾い勝負をしてくれることになった。
「田坂さん、絶対いっぱいゴミ集めようね!」
「う、うん!」
林田君の方を見ると、「上手く行った」みたいな顔をしていた。自分が悪者になってでも、多くのゴミ拾いをさせられることに満足してるんだろうな。
お調子者に見えるけど、すごい良い奴だよ。
私は林田君に近づいていって、満足そうな林田君に伝える。
「ゴミ拾いを一生懸命するヤツって良いね。街が綺麗になるから、私好きなんだ」
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