沖縄そば
毎週木曜日は、学食で麺類が安く売られる日。
そのおかげで、お財布に優しくて嬉しいけれども、学食が混んでしまうというのが難点だ。
そうはいっても、私も麺が食べたいから並んで買うんだけどね。
麺類が好きな人にとっては、嬉しいけど大変な日だよ。
買い終わるまで、いつもよりも長い時間がかかったが、麺はしっかり出来たてのようだった。
熱いどんぶりをトレーに乗せて、空いてる席へと向かう。
席に着くと、見たことある女子が二人で言い合いをしていた。
「うどんって言ったら、やっぱり『きつねうどん』じゃないの? お揚げが乗ったうどん美味しいじゃん」
「いやいや、天ぷら乗せた『たぬきうどん』が至高だよ。味が染み出すのは、天ぷらアンド天かすだよ! わかってないなー」
言い合ってるうちの一人がこちらに気づいたようだった。
「玉城さんだ。久しぶりじゃん! 今の私たちの話聞こえてた?」
「玉城さん、やっぱりうどんには、天ぷらだよね!?」
お昼時間でゆっくり食べたかったのだが、論争に巻き込まれてしまったらしい。
正直、どっちでもいい議論なんだけれども。何か答えておかないといけないか。
「私は、どちらかというと、『肉うどん』が好きだよ。ははは……」
「「肉うどんー!?」」
二人は驚いて私の方を見ていた。
その後、私を介さずに二人で議論を進め始めた。
「確かに、肉の旨味っていうのが出ると美味しいよね。玉城さんの意見も、一理ある」
「うんうん。お揚げや、天ぷらからは出てこない動物性の油の旨味が染み出て来るよね。肉うどんか……。ありかもしれない」
二人で勝手に話が進んでいくので、私はまったりと自分の麺をすする。
「ズズズズー」
一通り議論をしたのか、また私の方を向いて話しかけてきた。
「そう言えば、玉城さんは何食べているの? さっきの話だと、肉うどん食べてるの?」
「いや。私が食べてるのは、沖縄そばだよ。美味しいよ」
「へっ!? そんなメニューあったっけ?」
「そっか、普通だったら知らないのかも。これ、裏メニューなんだー」
二人は目を見開いてパチパチと瞬きをした。
身体を乗り出して、私のどんぶりの中身を覗いてきた。気になってそうだったので、具材について説明してあげた。
「これ、肉も入っているんだ。この骨付き肉のことを、『ソーキ』って呼ぶんだよ」
「知らなかった。そんなメニューがあるんだ!」
「すごい美味しそう! 私も今度食べてみたい!」
「うん、美味しいから今度注文するといいよ。沖縄そばって注文するとこれが出てくるよ」
私は、マイペースに麺をすする。
その様子を二人は見つめていた。
沖縄そばって、『ソーキそば』って呼ばれたりもする。入っている肉によって、呼び方が変わるのだ。ソーキという骨付き肉が入っていたら、沖縄そばではなくて、ソーキそばと呼ぶ。
厳密に言うと、私が食べているのはソーキそばだ。
けど、それを二人に言うと、また言い争い発展しそうだから黙っておいた。
「これは、沖縄そば。私の好きなメニューだよ!」
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