ボス

 友達の由香がスマホゲームで遊んでいるのが見えた。

 私もハマっているゲーム。モンスターを倒すと、そのモンスターの素材が出てきたりするゲーム。

 リアルの街のマップとも連動していたりして、楽しいんだよね。


 大事な戦いなのか、由香は真剣な表情で画面を睨んでいるようだった。


 私は邪魔しないように、後ろから画面をのぞき込んだ。

 画面の中では、キャラクターが敵の攻撃を回転して避けていた。


 避けたと同時に、敵へと切りかかり、それがクリーンヒットして敵を倒せた。由香は大きく頷いていた。

 一段落着いたようなので、由香に話しかけた。



「由香、凄い上手いね」

「うわっ! 美咲か。私の後ろにいないでよビックリするから!」


 私は由香の隣の席へと腰かけた。


「由香上手いね。ダメージ全然食らってないじゃん?」

「ふふ、すごいでしょ。ここのボス何回も倒しているからね」


 由香は誇らしげに鼻をかいた。私は話を続ける。


「クリアしたゲームを何度もプレイするって、相当好きなんだね」

「それもあるけれども。ここのボスがカッコよくてさ。何回もやりたくなっちゃうんだよね」


「わかる気もする。けどさ、ここのボス凄い強くない? 私もやったことあるけど、いつもやられちゃうんだ」

「そうだよね。今回は上手く行ったけど、私も何度もやられてるよ」


 ボスを倒したと思ったけれども、ボスが起き上がった。

 連戦で敵と戦う、乱入クエストが発生したらしい。


「あ、きたきた! 乱入だ!」


 由香は画面に集中し始めた。私もその様子を横から見守る。

 画面の中のキャラクターは、由香の操作に合わせて動く。

 ギリギリのところで、すべての攻撃を避けていった。


「ここね、ランダム要素が強いから難しいんだよね」


 そう言いながらも、一度も攻撃に当たらないで避けていく。

 避け終わった後に、タイミングを見計らって攻撃をしていく。ラッシュで攻撃をして、相手が動き出しそうになったところで、また距離を開けて攻撃を避ける姿勢に入る。


 由香は、またも攻撃を避けていった。

 何度か攻防を繰り返した後に、敵を倒せた。

 私は、追加ボスを倒した画面を初めてみた。ボスを倒した報酬がものすごい数手に入っている。


「すご! なにその数!? ありえないくらいもらってるじゃん!」

「そうそう。ここのボスって、素材がいっぱい手に入るんだよね。強いだけはあるよ、うんうん」


 由香は、全てのアイテムを取り終えると、満足そうに画面から目線を上げた。

 私は由香をねぎらった。


「お疲れ様! 今度、私と一緒にボス倒して欲しいな!」

「いいよ、いいよ。私、ここのボス好きなんだ! 何度だって倒しちゃおう!」

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