キノコ占い

 休み時間に教室を移動するため、廊下を歩く。

 教室の中は暑いのに、廊下に出ると少し肌寒い。

 朝寒かったから、薄目のカーディガンをつけて来たけれども、それでも少し寒かった。


 隣を歩く香織の方を見ると、長袖のワイシャツのみ。少し寒そうだなーって眺めていると、マイペースにスマホをいじっていた。

 スマホ画面を見ながら笑っている香織がつぶやいた。


「ふふ、今日は良い日だなー」


 誰かから嬉しいメールでも来たのかな?

 そう思って、聞いてみた。


「香織、スマホで何を見ているの? 楽しそうな顔しているよ!」

「えへへ、そうかな? 自然と笑顔になっちゃうのかも。ふふふ」


 香織は、我慢できずにニヤニヤ顔で見せてきた画面には、見慣れないキャラクターが映されていた。何かのアプリだろうか。そのキャラクターから吹き出しが出てきて、何かしゃべっているように見えた。


「何そのアプリ?」

「これ? キノコだよ。『キノコ占いふっていうやつだよ。知らないの?ー!」


 画面の中にいるキノコのキャラクターと、キノコの説明が書かれていた。

 私は、その説明を読み上げた


「今日のあなたは、『トリュフ』です? 薫り高いキノコ。あなたの言動の端々に、品性が出てくるでしょう?」

「ふふ、そうらしいんだよ。今日の私は少し高級なの! いいでしょー!」


 香織は、嬉しそうに言っていた。

 これを楽しんでいたのかと、少し納得した。

 占いを教えてくれているキノコのキャラクターがすごく可愛らしく見えてきた。


「それ楽しそうだね! 私もやってみたいなー?」

「いいよいいよ。里美もハマると思うよー! すっごい可愛いんだから」


 香織がスマホを私の方に向けてくれた。

 画面には、キノコのキャラクターがこちらを笑ってみている。

 ボタンを指さして、「占いをしてください」と言っているようだった。


「えいっ!」


 キノコのキャラに言われるままボタンを押すと、画面は暗転した。

 そして、いろんな種類のキノコがルーレットのように回り出した。


「これどうするの?」

「この画面になったら、もう一回クリックしてみて! そしたら止まるからさ」


 スマホをクリックすると、ルーレットが止まった。

 ルーレットが止まったのは、舞茸だった。

 私は、画面に映し出された占い結果を読みあげる。


「冬の寒さを乗り切る舞茸。あなたの隠れた魅力が少しずつ染み出してくるでしょう。ラッキーアイテムは茶色いカーディガン」


 私は着ているカーディガンに目をやる。占い通りの茶色いカーディガン。


「やったね! 今日は良いことがあるよ! この占い当たるからね!」

「ありがとう。この、キノコ占いって可愛いね。好きになっちゃうかも!」

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