豆乳
お弁当の時間。
最近寒くなってきたけれども、お弁当が腐らないように保冷剤はしっかり入れてくれる母。
白米やおかずが冷たくなってしまうという欠点はあるけれども、その代わりに暖かいお茶も持たせてくれる。至れり尽くせりで、助かる。
水筒から、暖かいお茶をコップに入れて飲む。
「はぁー、暖かい。やっぱり日本人は、お茶だよねー」
「あぁー、わかるわかる。暖かいお茶っていいよね」
一緒に食べている結子が答えた。
結子は頷いて同意してくれるものの、お茶じゃない紙パックのジュースを飲んでいるようだった。それも、美味しそうに飲んでいる。
「ねぇねぇ、
「これのこと? これは豆乳だよ!」
確かによく見ると、豆乳だ。黄色いパッケージで、バナナオレかと思ったら、バナナ豆乳のようだ。
「ほぇー? 豆乳なんて飲むんだ? いつもジュースばかり飲んでたのに、なんだか健康志向になったの?」
「ふふふ、そうそう。豆乳ってすごく身体にいいんだよ!」
結子は、パッケージの成分表を見せながら教えてくれる。
「豆乳って言うのはね、牛乳に似てて、カルシウムの補給やら鉄分の補給が出来るの。けど、牛乳と比べて低脂肪だから太りにくいんだよ」
真面目な顔で教えてくれる結子。
夏に比べて、頬が少しふっくらしたように見える。
「分かった。秋になってきて、太ってきたから気にしてるんでしょ!」
「そ、そ、そうだけど? ストレートに言わないでよー! いじわるー!」
ぷくっと頬を膨らませる結子。
やっぱり少しふっくらしてるように見える。
「痩せてる時よりも、今の方が健康的で可愛いと思うけどね。けどなー、私も太ってきちゃったから、飲もうかなー?」
「そうそう、豆乳にはもっとすごい効果があるらしくてね。ちょっと耳貸して」
結子の言う通り、耳を寄せた。
「なんと、豆乳を飲むと胸が大きくなるらしいんだよ」
「うそーーー!?」
びっくりして大声が出てしまった。
結子は、私の驚きに楽しそうに笑っていたが、人差し指を口に当てて、静かにと促していた。
裕子が手招きをするので、再度耳を寄せる。
「なんとね、あの美穂ちゃんも豆乳を大量に飲んでるのを見かけたの」
「あの、胸がすごくすごい、美穂も?!」
また驚いて、声が大きくなってしまった。
今度は、大きい動作で注意された。
「静かに、静かに!!」
「ご、ごめん」
「けど、美穂ちゃん見てて。この前一リットルの豆乳を持ってるの見かけたの」
そう言われたので、美穂の方を凝視する。
美穂は、私たちと同様にお弁当を食べていた。
そして、机の上には豆乳が乗っていた。
「ほ、本当だ。あのサイズの豆乳を学校に持ってくるなんて、すごい……」
「ね、そうだよね」
私と、結子は落ち着いてお互いの胸と、美穂を比べてみる。天と地ほどの差があるのは、一目瞭然だった。
「……そ、そうだそうだ。私、実は豆乳好きだったのを思い出したよ。明日から、一リットル持ってきちゃおうかな!」
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