銭湯

 部活終わりに更衣室で制服へと着替える。

 部活では毎回大量の汗をかくため、シャツがびしょびしょになるのが常である。


 濡れたシャツが教科書と触れ合わないように、汚れ物専用の袋に入れて、その上で手提げに入れて持つ。

 身体には制汗スプレーをかけて、私の身体もケアする。


 帰るだけだけど、その辺りを気にするのが乙女心というもの。

 更衣室は華やかな香りに包まれる。


 汗で濡れている状態が気持ち悪いので、私は早く着替えてしまった。

 チームメイトよりも早めに着替え終えて手持ち無沙汰だったので、近くにいた戸川に話しかけた。


「いやー、今日も疲れたね!」

「真子のパスが鋭すぎるんだよね! そのせいで脚くたくただよ!」


「あぁ、練習試合の最後のパスのこと? けど、ナイスパスだったでしょ? フリーでシュート打てたんだし」

「そうだけどさー……。っくしょん!!」


「あれ? 皐月、風邪ひいた?」

「なんでだろうな。今日寒いからか?」


 戸川のくしゃみにつられて、他のチームメイトもくしゃみしだした。

 更衣室の中は、みんなの熱気で蒸し暑いくらいだけれども。

 それでも、くしゃみをするなんて。

 やっぱり風邪だろう。


「……っくしゅん!」

「あはは、真子もくしゃみしてるじゃん。みんなで風邪引いちゃったんじゃない?」


「うぅー。もうすぐ大事な試合だっていうのに……」

「そしたらさ、みんなで身体温めるために銭湯でも行こうよ!」


 ◇


 学校の近くに銭湯がある。

 行きたい人を募って、集まったメンバーで歩き出した。


 辺りはすっかり暗い。車が通らない裏道を進んでいく。

 街灯の明かりが目立つ季節。半袖シャツだと、肌寒い。部活をしている時は、走り回っていて暑いくらいだったのに。


 早歩きをして寒いのを我慢しつつ、銭湯へ向かう。


 銭湯はすぐ近くにあるので、すぐに着いた。

 さっきまで火照っていた身体は、歩いているうちにすっかり冷えてしまった。



「久しぶりに来たね。この銭湯に来たのは、冬以来なのかな?」

「そうだね。寒い時期はいっつも来てたもんね。」


 銭湯は、学校の更衣室よりも広い。

 それでも、メンバーが集まると熱気が籠っている。


 棚や床など、学校と同じくらいの古いところもあるけれども、綺麗に清掃が行き届いている。

 私たちの部活メンバーのお気に入りの場所だ。


 さっき着替えたばかりだけれども、すぐに衣服を脱いで浴室へと向かう。



「おー、今日はお客さんいないよ! 貸し切りだ!」

「私が一番乗りー!」


 戸川は、はしゃぎながら浴槽へと向かっていった。


「ちょっとー! 身体洗ってから入りなよ! マナーでしょ?」

「あっ。そうですよね。洗ってから入ります!」


 身体を洗い終わると、浴槽へと浸かった。

 冷えた肌が一気に温まる。

 湯気が顔を包んで、肺の中まで温まる感覚。



「はあーーー。生き返るーーー!」

「本当だよねー」


 お湯の中に、疲れが流れ出ていくよう。

 とても気持ち良かった。


「やっぱり、銭湯っていいね! 私、大好きだな!」

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