アメリカンドッグ

 今年の文化祭は、アメリカンドッグ屋さんをすることになった。

 ありきたりな出し物かもしれないけれども、クラスみんなで協力して準備をするというのは楽しい。


 学級委員長を中心に計画を立てて、いつまでに何をするかっていうのを決めていった。

 アメリカンドッグにも種類があったりする。それを決めたり、何を使って焼くと美味しいかとか、どんな焼き方が美味しいかとか。

 全部試行錯誤して決めていこうと、計画を立てて進めていた。



 放課後の時間を使って、準備を進める。

 準備をしている時間が一番楽しい時間かもしれない。


 先生に相談したところ、実際の商品を試し焼きしてみたいという要望が通って、今日は何種類かのアメリカンドッグを焼いてみている。



「アメリカンドッグってやっぱり、棒についているカリカリした部分が美味しいよね」


「えー? そこまで食べるの? 私はあまり食べないけれども」


「そうなの? 騙されたと思って、和子も食べてみなよ!畳


「朱莉が言うなら、食べてみようかな」



 ――カリカリ。


 アメリカンドッグの周りのふわふわした生地部分と違って、棒の近くの部分は固い触感がした。

 お米で言うと『おこげ』部分のような感じで、少し香ばしい味もして新鮮な感じがする。


「美味しい……」


「でしょでしょ?」



「あとはね、食べ方としてこういうのをつけるのも美味しいんだよ!」


「普通はケチャップとか、マスタードとかじゃないの? それ、何つけているの?」



 朱莉は、アメリカンドッグを皿の上に乗せると緑色の粉をパラパラとかけていた。


「これはね、抹茶塩なんだ。色々試したんだけど、これって意外と合うんだよ」


「朱莉が言うなら、美味しいのかもしれないね。ちょっと私も食べてみたいな!」



 朱莉から抹茶塩をもらい、自分のアメリカンドッグにもかけてみた。

 口に入れてみると、アメリカンドッグのはずなのに、和が感じられた。


 最初は、少し苦みが口の中に広がるが、中に入っているソーセージの肉汁が抹茶の苦みを吸収してくれる。

 ホットドッグを噛み進めると、段々と肉部分の方が多くなっていくので、甘味が増していく。たまに来る苦味もアクセントになり、肉の甘味がより感じられた。


「これ、すっごく美味しいよ!」


「でっしょー? 私も独自にホットドッグ研究しているからね!」


 朱莉は誇らしげに胸を張っていた。

 その後、カバンからごっそりと調味料を取り出した。


「抹茶塩も美味しいけど、他の可能性も探してみたくない?」


 その言葉に私は、勢いよく「うん」と頷いた。


 楽しい文化祭の準備。

 クラスの友達も巻き込んで、いろんな味を試していった。


 その中心にいる朱莉は、とても楽しそうに笑っている。


「アメリカンドッグって、やっぱり美味しいよね! 私、大好き!」

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