どろソース

 バスケットボールの地区予選大会。第一試合が終わった。


「ありがとうございました」


 コートの真ん中に整列して礼をする。

 顔を上げると、みんなの笑顔が輝いていた。



 私たちは初戦で勝利した喜びを分かち合いながら、お好み焼き屋さんに向かっていた。小さなお店の扉を開けると、ふわっとしたキャベツの香りが迎えてくれる。


「今日は、私たちの勝利を祝おうね!」


 部長のたまきが明るく声をかける。その言葉に、みんなの気持ちがさらに高まった。席について、鉄板の上でお好み焼きを焼き始めると、誰からともなく今日の試合の感想を語り合う声が広がった。


「あの時の三波のディフェンス、すごかったよね!」

「さやかのシュートも最高だった!」


 そんな声が飛び交い、店内は笑顔と笑い声でいっぱいだ。


 朱美が自分のお好み焼きにふりかけている。見慣れない茶色い瓶を取り出し、それを慎重にかけ始めた。私はそのラベルを見て「どろソース」という名前に目を奪われる。


朱美あけみ、それ何?」と尋ねると、彼女はにこりと微笑んだ。


「これね、『どろソース』っていうんだ。ちょっと辛めだけど、お好み焼きにぴったりなんだよ」


 そう言いながら、朱美はさらにソースをかけて、匂いを楽しんでいるようだった。



「どろソースって、美味しいの?」

「試してみてよ!」


 興味津々に聞くと、朱美は一切れを差し出してくれた。

 その一切れを口に運ぶと、想像以上の美味しさが広がった。どろソースの濃厚な味わいが、お好み焼きの風味を引き立て、少しピリッとした辛さが絶妙なアクセントになっている。


「これ、本当に美味しい! どろソースっていうんだ、最高だね」


 感動を伝えると、朱美は満足そうに微笑んだ。


「でしょ? わたし、どろソースが好きなんだ」


 打ち上げで嬉しい気分にさらに追い打ちされた気分。

 何気ないお好み焼きの一口。


 試合の結果だけではなく、好きなものまで共有できたことに喜びを感じた。


 試合の勝利ももちろん嬉しかったけれど、この打ち上げのひとときが、もっと特別に感じられた。みんなと一緒に笑い合い、好きを共有する。その瞬間が、私たちの友情をさらに深めてくれる気がした。



 次の試合でも、この仲間たちと一緒に戦いって勝ちたい。

 どろソースのように濃厚で刺激的な時間を過ごしながら、私たちの絆をもっと強くしていきたい。試合の結果以上に、この友情が私にとって何よりの宝物だから。


「みんな! このソース美味しいよ!」


 今知ったばかりだけれども、私もみんなに教えてあげた。嬉しさは共有したほうが楽しいしね。


「私は、今日この『どろソース』を好きになりました!」

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