ガトーショコラ

 オシャレな喫茶店に、友達たちとやってきた。


 この喫茶店はコーヒーもさることながら、ケーキがすごく美味しいと雑誌で紹介されていた。喫茶店なのに、ケーキ特集によく登場するようなお店。


「ずっと前からここ来てみたかったんだー!」


 友達仲間の中でも一番ミーハーな早紀さきが今日のお店を決めた。早紀さきでさえ、始めてくるようなお店だから、誰も来たことはなかった。


 店員さんからして、オシャレだった。

 制服は、黒地のシャツに黒いエプロンをつけていて、歩く姿がとてもエレガントな印象を受けた。

 席もテーブルも、ゴシック調でまとめられており、別世界に連れて来られたかのような錯覚を起こしてしまう。


「ご注文が決まりましたら、ベルでお知らせください」


 そう言って、店員さんは下がっていった。

 私たち友達グループは、ひそひそと話し始める。


「すごいね。あんなに眼鏡の似合う男性見たの始めたかも」

「いや、それよりもこんな席座ったことないよ!」

「メニューなんかも、雰囲気出てる!」


 こそこそと話しながら、メニューを開いて決めていく。

 見たことが無い横文字ばかりが並んでいた。英語の教科書でも、もう少し知っている単語はあると思うのだけれども、たぶん国が違うのだろう。異文化とは、カッコ良く見えてしまうものかもしれない。


 写真も付いていないメニューを見ながら決めなければならないようだった。


「知らないケーキばっかりだね」

「そうだね」


 その中でも、早紀さきだけは知っているものがあるようだった。


「ガトーショコラって美味しいよね?」

「なにそれ?」


「えっ……? まさか、知らないの……?」


 当然みんな知らないものかと思っていたら、早紀以外の子も知っているようだった。私だけ、オシャレな情報に疎いのかな……?

 なんて返したものかとソワソワしていると、早紀が話を続けてくれた。


「けど、ここのガトーショコラは特別かもしれないな。中にトロトロのチョコレートが入っているんだけれど、その量が半端じゃないんだよ」

「えー! そうなの? どのくらい入ってるの?」

「気になる気になるー!」


 早紀は笑いながらスマホを皆に見せてくれた。

 スマホには、ケーキを半分に切った写真が映し出されており、その中からトロトロに溶けたチョコレートが溢れだしていた。

 そして、そのチョコレートが皿をなみなみと満たしていた。


「これはね、ガトーショコラっていうよりも、チョコレートの原液を食べてるっていう感じかもしれないよ。ふふ、これでもすごく美味しかったんだ。私、ここのガトーショコラ、すごく好きなの」

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