月見バーガー
新学期が始まる時に買ったシャーペンが、壊れてしまった。
まだ半月しか経ってないというのに。自分では、物を大切に使う方だと思ってたから、なおさらショックだった。
隣の席の重岡君は、私がシャーペンを壊すところを目撃していたようで、壊れた時に慰めてくれた。
同じタイミングで重岡君もシャーペンが壊れたらしいからって、私の買い物に付き合ってくれることになった。
「すごい偶然だね。シャーペンなんて、なかなか壊れないのに。重岡君って筆圧濃い方なの?」
「いや、そういうわけじゃないんだけどね。なんでか壊れちゃったんだよね。ははは」
「ものを大事にしてないとかなの?」
「い、いや、そんなことは無いんだよ。大切に使う派だよ、僕!」
「なんで慌ててるの? まぁいいか」
◇
変な態度の重岡君と一緒に、駅前にある雑貨屋さんに行って、シャーペンを選んだ。
重岡君は、シャーペンが好きだったらしくて、色々教えてくれた。いっぱいしゃべってるうちに、時間が経つのを忘れていたらしい。
お店から出る頃には、日が落ちて月が見え始めていた。
「もうこんな時間なんだね。なんか食べて帰る?」
「そうだね。何か食べていこうか?」
「私、月見バーガー食べたいな!」
「じゃあ、僕が買ってくるよ。席に座ってて」
重岡君にそう言われたので、私は席へと向かった。
駅前だからか、店の中は混んでいた。空いているのは窓際のカウンター席だけだったので、私はその席へ腰かけた。
座ってしばらくすると、重岡君と月見バーがやってきた。
重岡君が注文したのはナゲットだけだった。月見バーガー好きっていってたのに……?
まぁいいか。
「それでは、頂きまーす」
食べながら、重岡君はしゃべり続けていたシャーペンを選んでいた時と同様に、重岡君は良くしゃべる。
月見バーがーの話をしていたら、唐突に月の話をしてきた。
「月、綺麗だね」
よくわからないけれども、重岡君のトークはいったん止まってしまった。
私に同意を求めているっていうことなのかな?
トークが上手いんだから、話し止めなければいいのに。私が何か返さなきゃなのか……。
「月見バーガー、綺麗だよね。店舗によっては、ぐちゃって崩れてるんだよね。これはすごく綺麗」
「はは、そうだね。月見バーがー綺麗だね。僕は、空に浮かぶ月のことを……」
「はい。半分あげますね」
私は月見バーガーを半分に分けて、重岡君に渡した。
綺麗に半分に分けられた。我ながら綺麗にできたと思う。
「綺麗な月を半分ずつ分けるって、良いよね。なんだかカップルがすることみたいだね。……なんてね」
「そ、そうだね。僕の思い伝わってたの……かな……?」
重岡君は少しうつむいて、恥ずかしそうに言ってくる。
「もちろん伝わってましたよ。月見バーガー、重岡君も好きだよね?」
「うーん、なんだか伝わってるようで、伝わってないような……?」
重岡君は、残念そうに窓の外を見上げた。
「うん? 大丈夫だよ。伝わってるよ」
そう伝えると、重岡君は慌てだした。
「そ、そうなの。そうだとしたら、なんだか急に恥ずかしくなってきちゃうな……」
「変な重岡君だね。ちゃんと、分かってるって。黄味は、少し多めになってるから。私も月見バーガー好きなんでわかってます!」
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