海の話

 夏の暑さは、いつまで残るんだろう。

 もう九月も半ばに差し掛かって?秋本番が始まろうとしているはずなのにね。いつまで経っても暑いまま。

 酷暑の酷だけが取れたのかもしれないけれども、暑さはずーっと残っている。


 教室から出ると、すぐ暑い。

 次の授業は体育だから、更衣室で着替えると体育館に移動した。

 体育館も蒸し風呂のように暑かった。


 なにもしていないのに、すぐに汗がダラダラと流れている。


『残暑ざんしょ』なんて言われても、もはや笑えないレベルで地球の危機なんじゃないかって思う。

 地球の危機なんて言うと、主語がでかいか。

 私が、絶賛ビンチ状態です。


「あついーーー」


 一様にみんな、暑い暑いと口をそろえて言っている。

 日焼けした子も多いし、そういう子は見た目も熱そうだった。

 私もその仲間の一人だ。


「ほんと夏って、人の命を奪うよー」

「大丈夫?」


 私がぼそりと弱音を吐いていると、清子せいこちゃんが声をかけてくれた。

 清子ちゃんは冷たく冷えたペットボトルを私に差し出すと、額に着けてくれた。


「気持ちいー。すごい冷えてるの良いねー」

「凍らせてきちゃったから、溶かすの手伝って?」


「うんうん! ぜひとも協力したいです!」

「「はははは」」



 清子ちゃんは、肌がとても白い。

 見て言えるだけで、涼しさを味わえる気がする。


 肌が白いっていうだけで、なんだか可愛く見えちゃうんだよね。肌が綺麗っていうのはすごく徳なのかもしれない。

 そう言えば、清子ちゃんって、日焼けしているところ見たことないな?


「清子ちゃんって、海とか遊びに行かなかったの? すごく肌が白いよね。羨ましい」

「私は?そういうところいけないんだ……」


 清子ちゃんは、なんだか寂しそうにそう言った。


「なんで? もしかして。泳げないとか? 私も泳げないけど、楽しんで来たんだよー!」

「ふふ、楽しそうだね。私は生まれつき肌が弱いから?日光にあまり当たれないの。だから海とかいけないんだー……」


「ほぇ? そうなの?」


 清子ちゃんは、静かに頷いた。


「私からしたら、海で遊べる方が羨ましいよ。どんなふうに遊んだか?詳しく聞かせて? それを想像して私も楽しむから」

「清子ちゃんがそれで楽しめるなら……。けど……」


 少しためらう気持ちもあって?言葉に詰まってしまった。

 清子ちゃんは笑って、話を続けてくれた。


「いいからいいから。教えて?」

「わかった。海はね、友達と一緒に行ったんだけどね。でっかいボートを持って行って、みんなでそれに乗ってね」


 私の話を、清子ちゃんは笑って聞いてくれた。


「うふふ、楽しそう。海の話、私好きなんだ」

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