脱出ゲーム
「文化祭の出し物って色々あるんだね」
九月も半ばになると、各クラスで文化祭の催し物を決め始める。
各クラスで彼らないように何個か候補を出して、それを掲示板で通知したりする。模擬店なんかは数が限られているし、模擬店同士で同じ食材が被ってしまった日には目も当てられないから、まだ決定では無いもの候補が張り出される。
私たちのクラスも候補を出したものの、参考に掲示板の前で各クラスでやることを眺めている。
「一組は『お化け屋敷』、二組は『クレープ屋さん』、面白そうだね」
「いや、これらはありきたりだよ! もっと新しいことやりたいよ」
一緒に見ていた枠が、少し怪訝そうに言った。
梓は新しいもの好きだから、定番的なものは嫌いなのだろう。
「梓は、厳しいね。お化け屋敷とか、すごい面白そうなのに?」
「お化け屋敷でも、リアリティのあるお化けが出たら怖いんだけどね。例えばさ、大量のGのお化けが出てきたら、私も女子高生みたいに『キャー』って叫ぶと思うんだ」
「それは、確かに叫ぶと思うけれども。それって、お化け屋敷っていうのかな?」
「やっぱり、バルサンした後の飲食店とかいう場所設定をしてね。大量のGが出てくるの。怖くない?」
「うーん。梓ってよくわからないよ……」
私も梓も、首をひねりながらお互いに納得いっていないようだった。
このまま平行線をたどるのも、嫌だったので話題を変えようと、別のクラスの催し物を話題にでもしよう。
「三組のやることって、新しいんじゃない? 『脱出ゲーム』だって!」
「本当だ。私も初めて見る。これは新しいよ」
梓は機嫌を戻したようで、楽しそうに掲示板を見つめていた。
掲示板には、候補と一緒にどんなことをやるのか、詳細な情報が書かれていた。
「ここに書かれている内容も、なかなか面白いよ。お化け屋敷から脱出しようっていうコンセプトらしいよ!」
「なにそれ、一組と被っちゃってるじゃん?」
「けどけど、こっちの方が数倍面白いよ! 謎が解けなかった場合は、お化けに食べられちゃうんだって!」
梓は、わくわくしながら言葉をつづけた。
「謎を解く面白さもあるし、時間内に謎が解けなかった時のスリルも一緒に味わえるんだよ? これってすっごい新しいよ!」
梓は興奮しながら、掲示板をバンバンと叩いた。
「うちも、模擬店なんてやっていないで、脱出ゲームをやろうよ! 脱出ゲーム喫茶!」
「なによそれ……?」
「飲食しながら、ちょっとした問題を解いて、解けた人から出れるの!」
「あ、新しいけども……。面白いのそれ……?」
梓はきらきらした目を私に向けて、楽しそうに言った。
「すっごい面白いよ! 私、脱出ゲーム好きだもん!」
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