続けること

「えー、すごい上手! そんなの、普通できないよ!」

「ふふー、そうかな? この前始めたばっかりなんだけど、私って才能あるかもね?」


 学校ではスマホのパズルゲームが流行っている。画面上に五色くらいのアイコンが並んでいて、それを動かして同じ色を三つ以上揃えたら消えるっていうゲーム。

 動かして消したアイコンのところには、上からまたアイコンが降ってきて下に詰まっていくんだ。そこでも、同じ色が三つ以上揃っていたら消えるっていう。

 そんな連鎖をしながら、繰り返してアイコンを動かして、いっぱい消していくっていうゲーム。単純だけど面白いんだ。


 昼休みに友達と集まってやったりしてるんだけれども、恭子きょうこがとっても上手いことに気づいたの。


「へへへ。なんだかコツを掴んだかもしれないよ! こうやって、こう!」

「わぁーーすごい! 10連鎖だよ!そんなの出したことないよ!」


「ふっふふー! どんなもんですか!」


 恭子は、その場にいた友達の中で人気者になっていた。

 私も、昔からやっているんだけどなー……。

 あんなに上手くはできないや。羨ましい。


美玖みくにも、コツ教えてあげようか?」

「うん、教えて欲しいー」


 変に意地張ってもしょうがないから、素直にコツは聞いた方が良いよね。


「こうやってね、こうやると、いい感じにできるよ」

「えっと……? え、わからない。どういうこと?」


「だからね、このアイコンって二つくっついてるからさ。ここに向けてもう一つ落としてあげるように」

「うーーー……。難しい……。やっぱり私には、ダメかもしれない……」


 やっぱりできないと嘆いたら、つばさちゃんが話しかけてくれた。


「美玖ちゃんの好きなようにやっていくのが良いと思うよ!」

「ほぇ? けど私も恭子みたいに、すぐ上手くなりたいよ」


 翼ちゃんは、私からスマホをひょいと奪うと、ゲームの続きをやり始めた。


「人には。人のやり方があるからさ。美玖ちゃん自身の上手くいくやり方を見つけたら良いって思うよ」


 翼ちゃんは、軽快に指を動かすと、私にスマホを返してくれた。

 スマホ画面の中では、連鎖が始まっていた。


「え、すごい。連鎖が出来上がってるよ。7、8、9、10、11……。全然止まらないよ!?」

「私もね、ずっと長い間このゲームしているんだ。10連鎖は通過地点で、20連鎖くらいまでなら、できるようになったの」


 翼ちゃんがそう言うと、周りの友達が一斉に翼ちゃんを囲み始めた。


「えぇー、すごいすごい! これ、どうやったの!」

「私も教えて欲しいー! コツとか教えてよ!」


 翼ちゃんは、一躍人気者になっていた。

 翼ちゃんは、囲んできた友達の方ではなく、私のことを見ながら話しかけてくれた。


「コツを使ってできるようになっても、そこから先は行き詰っちゃうからさ。楽しんで続けてたら、いつの間にかこうなれるよ」

「そ、そういうものなの?」


「うん。美玖ちゃんも毎日やってるの見かけるから、続けてたら私みたいになれるはず!」


 翼ちゃんは、とっても楽しそうだった。

 私も、翼ちゃんみたいになりたいな……。


 翼ちゃんの笑顔が眩しく見えて。


「続けることって良いよね。私、好きなんだー。一緒に続けよう!」

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