ポップコーン

「やっぱりと模擬店って言ったら、チョコバナナじゃないかな?」

「いやいや、焼きそばが良いだろ! お腹にたまるのがいいじゃん!」



「はい。えーっと『チョコバナナ』ですね。次は『焼きそば』ですね」


 とりあえず、出てきた案を書くのが、初期である私の仕事。黒板に言われたことを書いていく。

 今は、文化祭の出し物について、絶賛討論中なのだ。模擬店にするっていう方向性まではすんなり決まったものの、なんの商品を売るか決める段階になって意見が割れだしたのだ。


 女子からは、チョコバナナの模擬店。

 男子からは、焼きそばの模擬店を提案されたところだ。


 提案した女子の方が、少し怒り気味に抗議しだした。


「はあ? これだから男子は、食欲ばっかりでヤダヤダ。チョコバナナの方が作ってて楽しいでしょ!」

「女子だって、結局は甘い物ばっかりしか考えてないじゃんか!」



 そして、絶賛喧嘩中です……。

 こんな意見を黒板に書くわけにはいかないから、黙って静観する。仲良く同じ方向を向いていけないものかね。焼きそばでも、チョコバナナでも、どっちも美味しいし、どっちも楽しいと思うんだよ。なんでみんな争うんだろうなー……。


 なかなか収集がつかないくらい言い合いが激しくなってきたので、議長席にいる学級委員長が止めに入った。


「はい。喧嘩はそこまでにしてください。まずは『案出し』をしているんです。他の人の意見を悪く言うのは、やめてください。もっと建設的に、自分の案の良い所を言ってください!」


 委員長がそう言うと、男子も女子も黙ってしまった。

 さすが、委員長。一言で争いを止めるなんて、強い。

 私が憧れているだけはあります。


 しばらく、本当に誰も意見を言わなくなってしまった。

 ちょっと強すぎたのかもしれない。委員長は強くてカッコいいけれども、言い方を変えるとちょっと威圧感があるんだよね。


「誰も意見が出ないみたいだから、私から指名します。書記の楓さん。意見をお願いします」

「えー!? 私ですか?」


 いきなり私に意見を求められるなんて……。

 意見を言いたくないのもあって、私は書記なんていう雑用的なポジションになっているのに。


 委員長含め、教室中のみんなが私の意見を待つように見て来た。

 何か言わなきゃか……。


「私は、ポップコーンが良いと思います」



 私が意見を言っても、教室はシーンとしたまま。

 誰も言ってない意見だったので、みんなポカンとしていた。


「いいぞ、良い意見だぞ。なんでポップコーンが良いと思うかも合わせて教えてくれ」


 委員長だけは、私の意見を聞いてくれているようだった。それなら、続けよう。


「ポップコーンだったら、基本的に乾燥している種が材料なので、食中毒の心配も無いですし」

「うんうん」


「男子が要望していた通りのお腹に溜まりますし、女子が要望していた通り甘い味付けにもできますし」

「うんうん」


「作っている様子が、とっても楽しいです!」

「はは、良い意見じゃないか! それ、黒板に書いて書いて」


 なんだか委員長に褒められた気がする。

 私は、ポップコーンという文字を黒板に書いた。

 本当の理由は、私が一番好きな食べ物だからっていうのは、内緒です。ふふふ。

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