串揚

 今日は串揚げの食べ放題に来た。横浜のワールドポーターズっていう商業ビルにあるお店で、全国でも唯一ここだけにあるお店らしい。名前は、『串葉』っていうお店。


 系列店に、『しゃぶ葉』っていうお店があって、そこから派生した串揚げ専門の食べ放題のお店なの。


 そんなところまで知っていると、串揚げ屋さんに詳しい人って思われそうだけど、私は『串葉』に来るのは初めてなんだ。

 ビルの一番上の階である六階まで上がると、その『串葉』はある。着いてみると、平日なのに多くのお客さんが列をなして、順番待ちをしていた。


 かなりの人数が並んでいるけれども、先に来て順番待ちしてくれていた和子のおかげで、私たちはすんなりとお店に入ることができた。



 友達グループによっては、高校からの帰りがけに、しゃぶしゃぶの食べ放題に行ったりする子もいたりする。カラオケに遊びに行く感覚で、食べ放題するらしい。そんな子たちは、どんな胃袋しているんだって思うけれども。成長期とは、そういうものかもしれない。

 私は、しゃぶしゃぶの食べ放題もしたことなかったから、食べ放題デビューってやつだ。


 私たちが店に着くと、すぐに席へと案内された。そして、串の揚げ方とか、食べ放題のルールなんかを一通り説明された。私は初めのことだったので、新鮮に感じながら聞いていたのだが、和子が「OKです、何度も来ているので、わかります!」と言って、店員さんをすぐにあしらってしまった。


「わからないところは、私が教えてあげるよ! すぐに串取りに行こう!」


「「おおー!」」


 串はブッフェ形式となっており、お客さんが自分で取る形式になっていた。串が並ぶテーブルには、綺麗に串に刺さった具材に並べられている。


「ねぇねぇ、なに揚げる? やっぱりヤングコーンかな?」

「ああー、いいね! 野菜系って美味しいよね。私は、アスパラにしよっ!」


 友達は次々と好きな具材を皿に取っていく。どれだけ食べるつもりだろうていうくらい、串を山盛りに積んでいた。

 私は、どれが美味しいとかわからないんだよな。どうしよう……。


 悩んでいると、和子が声をかけてくれた。


「裕美も好きなの取ってね?」

「どれが美味しいか、わからないんだ。和子のオススメとかある?」


 和子は優しく笑って答えてくれる。


「好きなものは人それぞれだよ! 誰も笑ったりしないから、インスピレーションで美味しそうって思うものを選んじゃうのがいいよ!」

「そうなの? 私、なにが好きかな……。うーん、じゃあ私は、これかな?」


 私は、串に刺さったスペアリブを取った。油が乗っていて、美味しそうな肉。


「ふふ、いいね! 串揚げデビューがスペアリブ! いいね裕美。センス抜群! それ、すっごい美味しいよ!」

「やっ、やったー?」


「裕美も、好きになると思うよ! 串揚げってみんなでやると、より一層美味しく感じるからね。私、串揚げ大好きなんだ!」

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