猫型ロボットみたいな友達
「やっぱい。お弁当わすれちゃったじゃん……。ショック……」
昼休みになって、初めて気づく事実。
なんで今まで気づかなかったんだろう。
休みボケしちゃってるのかな。うわー、どうしよう。
うちの高校の購買部は、激戦なのだ。
チャイムが鳴ると同時にダッシュして買いに行かないとすぐに売り切れちゃう。
食堂もあるけれども、そっちも同じ状況漬
まず、席が取れないのだ。すごく混んでるなかで注文の列に並んで、席が空くのを待ってってやると、昼休みが全部潰れちゃう。
忘れているのに早く気づけていれば、もう少し対策もできたのにな。
「はぁー……。どうしようかな……。今日は昼ごはん抜きにしちゃおうかな……」
誰に聞かせてるわけじゃないけれども、ついつい弱音が口から出てしまう。
それが聞こえていたのか、どこからか萌ちゃんがやってきた。
萌ちゃんは、ぽっちゃりした顔をニコニコしながら私の前の席へと座った。
「どうしたの、信子ちゃん? 浮かない顔して?」
「いや、何でもないんだけどさ。私お弁当忘れちゃったんだよね。今から購買行っても何も残っていないだろうし、今日は昼ごはん抜こうかなって」
私の状況を知って、少し憐れんだ表情を向けてくる萌ちゃん。
けど、すぐに表情は変わり、良いことを思いついたとばかりに、鞄をごそごそと漁りだした。
「信子ちゃん、ちょっと待ってね。私、良い物持っているよ。うふふふふ」
「なに、良い物って?」
萌ちゃんは、ニコッとした表情を私に向けると、ゆっくりと鞄からなにかを取り出した。
「カロリーメイトー!」
なんだか、どこかの猫型ロボットのような言い方で取り出した。
私も、それに乗っかるように、のんびりした眼鏡の少年のような聞き方で返した。
「カロリーメイトってどういうこと?」
「ふふふ、私は保存食として、常にカロリーメイトを持ち歩いているんだよ」
「おおー。それは、すごい準備がされているね。さすが萌ちゃん!」
「全味揃えているから、どれでも好きなのあげるよ。困ったときはお互い様だよ! カロリーメイトじゃない方が良ければ、ソイジョイなんていうのもあるよー?」
ちょっとぽっちゃりした体系なのは伊達じゃない。
……なんてことは、直接言えないけれども。
食べ物に関して言えば、萌ちゃんに言えばなんでも出てきそうな気さえしてくる。
「すごいね、その鞄っていろんな食べ物入ってるんだね! 夢の鞄だね!」
「ふふふ。なんでも言ってみていいよ。好きな食べ物出してあげるよ」
萌ちゃんが言うと、本当に出てきそうだな。
困っている人を助けられるなんて、萌ちゃんはすごいよ。
「ありがとう、萌ちゃん。一つカロリーメイトください」
「どうぞー!」
「私も今度、お菓子をお返しするね!」
「うん!」
困っている時に助けてくれる、猫型ロボットみたいな友達。
私の大好きなお友達。ふふふ。
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