おおきに
はぁー……。
始まってしまったか、新学期。
朝のホームルームを待つクラスメートは、みんなどこか上の空。
私も、周りから見たら同じ顔をしているんだろうな。
今日の私は、なんにも手につかない自信がある。
ここ最近で一番自信を持って言えるね。
一年の間のメインイベントが終わってしまったよ。
みんなも同じこと思っているんだろうな。
夏休みが忘れられないよーっていう感じ。
私がまさにその状態。
夏休みが終わると、ここから先の一年は消化試合っていう感じがしちゃうんだよね。
代り映えの無い毎日が始まったっていうことを感じちゃう。
秋が好きな人がいたら、ごめんなさいだけど。
夏休み明けは、変化が無くなって、落ち着く季節っていうイメージを持っているんだ。
休みに入る前と変わらないメンバー。
このクラスメートと、この学年の後半戦を頑張っていくぞーっていうことは思うけどね。
そこで、またドラマっていうのもあると思う。
そういう日常もまたいいか。
窓の外に目をやると、空にはうろこ雲が広がっている。
ぼーっとして、窓の外を眺めるっていうのには良い季節だよね。
女心と秋の空なんて言ったりして。秋の空は、女の人の心と同じで、綺麗で澄んでいるってことだよね。
私、秋の空が好きかもなー。
そんなことを考えて、ぼーっとしていると、ドアが開いて先生が入ってきた。
変わらない日常の始まりだ。
先生も何一つ変わらない雰囲気。
まぁ、1ヶ月で何か変わっている方がすごいけどね。
いつもの落ち着いた顔をしながら、先生は口を開いた。
「みんな、おはよう。今日は一つ大事なお知らせがあるから聞いてくれー」
「ほぇ? 大事だお知らせ?」
「なんか休み中に合ったのかな?」
「誰か、事故に合ったりして無いよな? みんないるし……」
先生の言葉に、クラスメートたちが、ざわついた。
いつもと同じと思っていたら、何か違うことが起こるかもっていう期待の現れだ。
私の心も、漏れなくざわついてる。
「それでは、入ってきてー!」
先生の呼びかけに応じるように、ドアが開いた。
そこから入ってきたのは、女の子。
毎日欠かさず梳いているような綺麗な黒髪が、肩にかかるくらいまで綺麗に伸びている。
歩くたびに、さらさらと揺れていい匂いが香ってくる気がした。
その子は、黒板の前に置かれている教卓の前で歩くと、こちらを向いた。
とても美人な顔をしている。
「京都からやってきました、茜といいます。今日からよろしくお願いします」
茜という子が一礼をする。
それでもやっぱり髪が乱れなかった。
「それじゃあ、島原の隣の席が空いてるから、そこに座れ」
「おおきに」
茜はそう言うと、私の隣の席についた。
「これから、よろしくね、島原さん」
「よ、よろしく! わからないことがあったら、何でも聞いてね」
「おおきに!」
茜ちゃんのハニカム顔がとても可愛く見えた。
おおきにって、可愛いな。ちょっと好きになっちゃうかも。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます