キウイ

「「キーウイ、キウイキウイを食べようー♪」」


 教室の隅が私の席。

 そこに友達で集まって、お弁当を食べるのがいつものこと。


 まったりと食べていたら、友達のうちの二人が謎の歌を歌い出した。


 私の友達だから、変なところはあると思っていたけれども、ついに『キウイの歌』なんて言うものを作り出してしまうとは……。

 とりあえず、友達としてツッコミは入れておくべきだよね。うん。 


「えっと、なにその歌? 即興で作ったの?」


 私のツッコミに対して、二人は顔を見合わせてびっくりした顔をした。


「えっ? これ、キウイの歌だよ? 亜紀あき知らない?」

「この歌、みんな知ってると思ったけど、知らないんだ?」



「……いや、そんな二人で示し合わせたように驚いても。私にドッキリでも仕掛けたいの?」


 私の返答に対して、二人は顔を崩さない。


「そうじゃないよ、本当にある歌だよ?」

「あれ? 亜紀ってテレビ見ないんだっけ?」


 真面目に言ってくる二人。

 冗談を言う様子じゃなくて、これは素で言ってるんだ。

 けど私は知らないしな……。


「私は、始めて聞くよ……?」


「そうか、じゃあ初見さんに全部歌ってあげようか!」

「そうしよう、そうしよう。是非ともキウイを好きになってもらわないと」


 そう言って、二人は歌い出した。


 楽しそうに、歌っていく。

 陽気な歌いぶりで、一字一句は頭に入って来ないけれどもキウイのことを歌だっていうのはわかる。


 健康になるために、運動するとか、大変だよねっていうことを言っていて、健康は楽しみながら実現するのが良いよって。

 キウイは良いぞー、キウイは良いぞーって。

 キウイ最高、キウイ最高。


 ……なんか洗脳されている気分だな。


「ほら、亜紀もキウイを食べようよ?」

「これで、キウイのことが好きになったんじゃない?」


「そ、そうかもしれない? 面白い歌だね」


 二人は、顔を見合わせて笑顔になると、お弁当として持ってきていたキウイを手に持って、私に勧めてくる。



「「ほらほらー。キウイを食べようー?」」


「い、いや、ほらさ、二人のキウイを食べてしまうのは、ダメじゃないかな? 二人の健康を奪ってしまうよ?」


 二人は、ふと我に返ったように戻った。


「それも、そうか。私たちの食べる分のキウイが無くなっちゃうね」

「また、今度分けてあげるように、余分に持ってくるね」


 二人の悪徳セールスみたいな勧誘は終わって、いつも通りのまったりとした教室の隅の光景に戻った。

 二人とも、手に持ったキウイをぱくりと一口食べた。


「いやー、キウイってやっぱり美味しいよね」

「うんうん、やっぱりキウイが好きだなぁ」

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