焼き肉

「今日は、いっぱい食べてくれ!」


 春樹が、いつものグループ4人組を集めて、大盤振る舞いしてくれると言った、奇行の多い春樹だけれども、それは初めてのことだった。いつもは自分が楽しむことばかりなのだけれども、今回はまわりが楽しめるようだ。

 春樹のことだから、なんの考えがあるかわからないけれども、私たちは呼ばれるまま焼き肉屋へと行った。



 焼肉屋でメンバーが揃うと、全員分の食べ放題を注文すると、春樹は言った。


「俺の奢りだから、ただ飯だと思って盛大に食べてくれ! 俺のためだと思って、腹に入る限り食べちゃって」


「へんなの春樹」

「人が変わったみたい」

「けど、良い方向に変わっているからいいことだな! やっと良い人に目覚めたか!」


 口々に思ったこ思ったことを言うが、真相はわからない。


 嬉しいことがあったからなのかな?

 バイト代が入ったからなのかな?

 いつもお世話になっているお礼なのかな?


 とか、色々と考えてみたけれども、どれもピンとこなかった。

 多分春樹のことだから、そんな単純なことじゃないのだと思う。

 春樹の考えって、考えても分からないんだよね。

 聞いたところで、いつも納得「できないことが多いけれども。


 気になったので聞いてみる。


「ねぇ春樹? なんで、みんなに焼肉奢ってくれるの? 春樹って、この夏一生懸命バイトしてたけど、このためだ「ったの?」


 私の質問に対して、春樹は腕を組んで、もっともらしく喋り出した。


「これはな、俺の試験が上手く行くための、前祝いなんだよ!」


 春樹の答えに対して、みんなの頭の上に、はてなマークが現れた。やっぱり聞いたところで理解できる理由じゃなかったなね。


「なんだそれ?」

「なにそれ? まだ試験期間も始まってないのに?」


 春樹は、うんうんと頷いている。


「普通だったら、みんなは、やらないだろうな。これは、俺独自の試験対策だからな。先に盛大に祝うことによって、試験が成功したものだと思い込んで、試験勉強が上手くできるようになるんだ」


 深く突っ込んで聞いたところで、やっぱり、なんにも意味がわらない。

 春樹は、謎理論の説明を続けてくる。


「成功する未来のを明確に思い浮かべられれば、モチベーションが上がるだろ? この焼き肉の儀式によって、俺のモチベーションが上がるって魂胆なのよ」


「ふーん、よくわからないけど、結局はく自分のためっていうことなの?」

「へぇー? 美味しいから良いか?」


 春樹は、自分のためだって言っても、みんなに焼き肉をきるなんて、なかなかできることじゃないって、私のは思っちゃう、

 ありがたいって思う時は、ちゃんとお礼を言わないとだよね。


「春樹、ありがとう、私、焼き肉って好きだよ!」

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