パズル

 夏休み明けてしまったと嘆いても、授業は始まるものである。


 やる気が無いのは、みんな同じ。

 先生でさえやる気がなさそうな、休みボケをしているような雰囲気があった。

 先生は、黒板に書いた字を淡々と読み上げた。読み終わった所で時計を見て、少し悩んだように話を続けた。



「うーん。時間はちょっと早いけど、まぁいいか。これで、今日の授業を終わります」


 そういって、夏休み明け最初の昼休みが始まった。


 先生が教室を出るなり、隣の席の関岡せきおかくんが、おもむろにカバンから何かを取り出した。

 きっとお弁当だろうな。

 関岡くんって、食いしん坊っぽい体形をしているし。夏休みが明けても、身体のフォルムは変わって無さそうだし。もうちょっと運動した方が良いと思うよ。


 そんなことを思って、ちらりと関岡くんの机の上を見ると、小さいが散らばっていた。

 関岡くんが慌てて出したから、お弁当でもひっくり返したのかと思ってじっと見ると、それは食べ物ではなさそうであった。よくよく見ると、なにやら小さいものは形が揃ってそうで、どこか角ばった形をしていた。

 その正体が分かった私は、思わずつぶやいてしまった。



「それって、パズル……?」


 私の声に関岡くんは、こちらを見た。

 私の驚く顔とは裏腹に、なんだか嬉しそうな顔をしていた。



「そうそう牧野まきのさん、これパズルなんだ」


 関岡くんはこちらを向いて満面の笑みでそういうと、すぐにパズルの方へと視線を戻した。

 休み時間になると同時に始めるなんて、相当パズルをすることにハマっているのか、夢中になっているようだった。

 どんなパズルなのかと、もう少し目を凝らしてみると、パズルのピース自体は小さいけれども、数が多いように見えた。学校に持ってきてやるにしては、かなりの多さに感じる。

 気になったので、聞いてみた。


「関岡くん、それってなんピースのパズルなの? なんだか多そうに見えるけれども」

「これね、1,000ピースあるんだよ」


「えっ、なにそれ、多すぎじゃない?」

「おっ? 牧野さんは、わかってくれるの? これ、かなりのボリュームなんだよ。それもオリジナルの絵柄なんだ」


 関岡くんは、そう言いながらニヤニヤとパズルを並べていた。


「このパズルはね、あっちの席にいる厚地あつちくんからのプレゼントでね。僕の誕生日を祝うと同時に、彼からの挑戦状でもあるんだ」


 誕生日にオリジナル柄のパズルをプレゼントするなんて、なんだかセンスが良いのか分からないけれども。そして、それを嬉しそうに、熱く語る関岡くんに若干引く気持ちはあるけれども。

 私も少し興味をそそられてしまった。


「あのさ、ちょっとだけ私も見てていいかな? 私もね、実はパズルが好きなんだ」

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