はい、チーズ!

 久しぶりに、裕子の家に遊びに来た。裕子の家は、私の家のすぐ隣なんだけれども、違う高校に通っていたり、部活が忙しかったりで全然会えても無かったんだよね。今日はたまたま二人の都合があったからって、家にお呼ばれしたんだ。


 家のチャイムを鳴らして待っていると、ドアが開いて、可愛い犬が出迎えてくれた。白い毛をした犬で、モフモフな尻尾を揺らしながら、私に向かって「いらっしゃい」と言っているようだった。


「うんと、犬ちゃん、こんにちわ? 裕子は、どこかな?」

「マルちゃん、慌てすぎだよ。ちょっと待ってよー」


 マルちゃんと呼ばれた犬を追いかけるようにして、家の奥から裕子がやってくる。玄関までくると、マルちゃんを抱きかかえた。マルちゃんは裕子の手にすっぽりと収まり、大人しくなでられていた。

 モフモフした白い毛のマルチーズ。興味津々な目でこちらを向いてきて、尻尾をパタパタと揺らしている。初めてこの子にあったけれども、私も撫でたくなるくらい、すごく可愛い。


「すっごく可愛いね。撫でてもいい?」

「いいよ、いいよ。あと、写真もどんどん撮っていいからね! そして拡散しちゃってくださーい!」


 写真は置いておいて、まずはマルちゃんを触らせもらった。思った通り、柔らかい毛をしていて、まるでシルクの布を触っているかのようなさわり心地だ。


「はわわ……。可愛いー……。この子の毛って、すっごい気持ちいいね」

「でしょ? それも含めて、すっごく可愛いから、この子を布教するのが私の使命だって思っちゃうんだよね」


「はは、なるほどね。それは、私が飼い主でも思っちゃうかも。そうしたら、せっかくだから写真撮らせてもらおうかな?」


 私がそういうと、裕子はマルちゃんを抱きかかえたままポーズを決めた。マルちゃんがメインのはずなのに、なんでか裕子もキメ顔をしてこちらを見ていた。

 裕子自体はオマケだと思うのだけれども、しょうがないのでスマホ画面に二人が写るように、どうにか画角に入れる。けど、そうすると、マルちゃんが小さくなっちゃうな。しょうがないかー……。


「はい。撮ったよー」

「えっ! もう撮ってたの? 掛け声とかないと、いつ撮ったかわからなかったよ、もう一回撮ってよー」


 裕子は、そう言って駄々をこねるようにマルちゃんを持ったまま、身体を左右に揺らした。マルちゃんは迷惑そうな顔をして、しかめっ面になっているけれども、いいのかな……?

 気を取り直して、写真を撮ろう。


「そうしたら、なんて掛け声にしたらいいの?」

「やっぱり『はい、チーズ!』がいいよ。マルチーズって言葉に似てて、その掛け声好きなんだ!」

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