NHK

 夏休みは休みなのか、休みじゃないのか。

 休みのはずなのに、休みじゃないと私は思う。



 例えばだよ?

『勉強することが、子供の仕事だ』って言ったりするじゃん?

 それには、納得なんだよね。


 勉強するって大変なの。頭を使った重労働なわけだよ。

 大人が会社で頑張ってる日中にね、子供も学校で頑張ってるの。

『勉強は仕事』だからって思えば、子供も大人と同じだなぁと思うの。



 それでね。

 宿題っていうのは、イコール勉強なわけなんだよね。

 つまり、仕事をしてるって言うわけ。

 場所を変えて家でも仕事をしてるの。


 学校に行った日の宿題なら、家でやる『残業』だと考えれば、それも百歩譲って納得できるわけ。その日の学校の延長線上な訳じゃないですか?

 それっていうのも、分かるわけ。



 そんな宿題をね、大量に出したら、それはもう『残業』では無いと思うわけ。

 単純に『仕事』なんだよ。


 つまり、夏休みに大量の宿題を出すってことは、休日労働を強いてるわけだよ。

 この仕事が終わらないと、本当の意味で休みにならないの。


 だから!

 宿題が終わっていない状態だと、夏休みは休みじゃないって思うわけ!



 それをお母さんに言ったら、普通に怒られました。


「屁理屈はいいから、早く宿題やっちゃいなさい!」だってさ。



 宿題って、単純に勉強ドリルをやればいいだけなら、いいんだよ。淡々とやるのはそんなに、大変じゃないんだよね。問題は、自由研究っていうのは、なにやればいいんだろうって悩んじゃうんだよ。


 お母さんは教えてくれないし。お父さんは会社に行ってるし。

 友達に聞くのも、なんだか違うなって思っちゃうんだよね。


 うーん。

 ずっと悩んでても、疲れちゃうからテレビでもつけよう。


 リモコンの電源ボタンを押すと、テレビ画面にはNHKが映った。

 久しぶりに見るな。小さい頃は好きで、ずっとNHK見てたんだよね。

 いつからか、子供っぽいと思って見るのをやめちゃったんだ。友達との話も合わなくなっちゃうし。


 テレビ画面には、『自由研究初心者向け』という文字が上に書かれていて、画面中央には可愛いキャラクターが映っていた。

 そのキャラクターは、困った顔をしていた。


「亀って、餌を見せたらよってくるのは、何でだろう? 餌のことがわかってるのかな?」

「いろんなものを見せて、近づいてくるか試してみようか!」


 なにやら、テレビの中では実験をしているようだった。

 亀に唐辛子を見せても、寄ってきた。


「どうやら、色を見ている訳じゃないようだね。次の仮説を立ててみようか」


 へぇー。面白い。

 仮説を立ててやってみるといいんだ。

 確かに、仮説っていうのを立てると、試してみたくなるね。

 次はどうなるんだろう。


由美子ゆみこー! テレビ見てないで、宿題やりなさい!」

「お母さん、私は今、自由研究の勉強をしているんだよ。やっぱりNHKは頼りになるよ! 私、NHK好きだ!」

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