ハイジのブランコ

「えぇっと、これが、『ハイジのブランコ』みたいなブランコっていうこと?」

「そうそう! これに乗ろう!」



 友達のあかねに連れられて、長野県の山の上。

『ハイジのブランコ』みたいなものがあるから行こう、って言われて現地に連れて来られたの。


 それで初めて、そのブランコっていうのを見たけれども。これは、本当に乗り物なのかな……?


 メルヘンみたいなんだよーとか、すっごく気持ちいいんだよーとか。爽快なんだよーとか。

 そんなことを聞いてたけれども……。



 ハイジのブランコって、怖そうなんだよね。

 私はハイジっていうのをあまり知らないけれども、なんだか山の頂上で、飛び降りる感じを味わえる感じで、大きいブランコがあるんだね。


 長野県は白馬村。標高1100メートル。高い山々が見えるところ。

 北アルプスの絶景を楽しみながら、ブランコができるらしいの。



「これ考えた人って、なにを考えていたんだろう」

「だからね、こういうブランコが出てくるアニメがあったって言ってるじゃん?」


「ふーん……。そういうアニメがあったのね。なるほどね。けど、絶対怖いじゃん!」



 納得したところで、あまり乗ろうとは思わないけれども。

 茜は、ずっと乗りたいと言ってただけあって、すごい乗り気だった。ブランコを見た瞬間から興奮しているのが伝わってきた。


「ちゃんと安全性は考慮されてるから大丈夫だよ! すっごい気持ちよさそうでしょ!」

「そうは言っても、怖いものは怖いよー……」


「よし、せっかくだから並んでみよう!」



 茜って、そういう強引なところがある。

 山の頂上まで来た時点で、答えは決まっていたかもしれないけれども。

 着いてきた私も、悪いかもしれないね。はは……。


 ブランコに乗りたい人は意外と多くて、順番待ちをした。

 そして、順番待ちの列が進んで、茜の番になった。


 係の人に説明された後、茜はブランコを漕ぎ出した。


「おおぉーー! すごく気持ちいいよー!!」


 傍から見てる分には、なんだか楽しそうに見えるけど、実際はどうなんだろう。

 次の私の番、すごく緊張するな。怖いな……。


 茜の番が終わって、こちらに戻ってきた。


「せっかくだから、香織かおりもやてみてね! すっごく楽しかったから!」

「……うん」



 茜といると、私もアクティブになっちゃうんだよね。

 はぁ。友達の影響っていうのも、いいんだか、悪いんだか。


 私も、係員さんに説明をされた。


「じゃあ、行きますね。しっかり掴んでて下さいね!」



 怖かったけれども、勢い良く漕ぎ出す。

 せっかくなら、やってやろうって思っちゃうんだよね。

 漕いでみると、すごく高くて怖かった。山の上に放り出される気持ち。


 けど、なんだか気持ちいい。

 空を飛んでるような。そんな夢の中にいるような気持ち。


 何回か漕いでブランコを終えた。

 ブランコを降りると、すぐに茜の所へと向かった。


「すごい楽しかったよ! 私、ハイジのブランコ好きになったかも!」

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