「ねぇねぇ……。夏に公園でデートってどうなの……?」

「まあさ。金欠ってやつだよな。カフェ通いばかりだったからだよ」


 今日のデートは、なぜか和也と公園にいる。木陰にあるベンチだとしても、暑いことに変わりない。昼間なんて特に暑いでしょ。そんな中でも、和也は暢気に鳩に餌をあげていた。


「いやー、鳩って平和で良いよな。何だかお前に似ているな。何にも考えて無さそうに歩いてて。餌があったら、集まってくるっていう」

「なによそれっ! 私だって色々考えて生きてるんだっていうの! そんなに単純じゃないんだからね!」


「まぁそうか。そんな辺りも鳩に似ているのかもな。こう見えても、鳩って意外と記憶力が良いんだよ。一度行ったところは忘れないから」

「なるほど、私も知っているかも! 『伝書バト』っていうの知っているよ!」


 和也は、いたずらっぽく笑いながら、こちらを向いた。


「鳩ってさ、やっぱり頭が良くていいな!お前よりも頭が良いかもだよ!」

「わ、私だって、頭良いでしょうが! もしかして、それってさ。私よりも鳩の方が好きっていうことなの?」


 私から質問をすると、和也は慌てて否定してきた。


「……い、いや、好きとか、そう言うのとは関係ないだろ。そ、それとこれは別の話で。頭の良さっていうのを……」


 ふふふ。いつも通り私のペースだな。

 和也は、いつまで経ってもうぶなんだからなー。


「そう言えば、私も鳩について知っているよ。鳩ってさ、いつでも発情期らしいよ?」

「……えっ? そ、そそうなの? そんないつもだなんてことあるのか?」


 和也は、顔を赤らめながら、あたふたしている。すっごい速さで目が泳いでいた。


「何を恥ずかしがってるのよ? 私も鳩に似ているところがあってね? むしろそれ以上かもだよ?」


 和也の方を見つめながら、そう伝えると、和也は恥ずかしがってうつむいて、頭を抱えてしまった。

 いつも通りだね。和也って口喧嘩に弱いんだからなぁー。


「でもね、本当のところは、鳩の発情期は真夏以外なんだ」

「……そ、そうなの? じゃ、じゃあ恥ずかしがることないか」


「私は、鳩以上だけどね」


 和也は顔を赤らめながら、またうつむいて、頭を抱えてしまった。

 ふふふ。さっき言ってた、頭の良さのことを言ったつもりなんだけどね。何を勘違いしちゃってるんだか。ふふ。


 今日の口喧嘩も私の勝ちっていうことでいいかな。8月も連勝記録が伸びちゃったね。

 いつになったら、和也は私に勝てるんだかね。


「鳩ってさ、やっぱり可愛いよね。平和の象徴! 私好きだよ。ふふふー」

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