手持ち花火

 熱帯夜で寝苦しい夜中。寝れるかと思った、スマホがピカピ力と連続で震え出した。何回も震えるものだから、誰だろうって確認してみると、学校の友達グループのメールだった。夏休みだから、なにかかやろうっていう話題で盛り上がっていた。


「明日、花火しようぜ!」

「最近公園だと、花火できないじゃん? どこでするのよ」

「市の条例が変わって、条件さえ守ればできるらしいんだよ」

「そうなの? じゃあやろう!」

「みんな、やりたい花火をもって集合な!」


 寝ている人の意見は聞かずに進められていく。とりあえず、明日また考えよう。



 ◇



 次の日の夜、指定されていた時間に、グループの全員が来ていた。私みたいに、メールの返信をしていない静香も来てるし。なんだかんだ、花火って楽しいから来るよね。


「みんな、久しぶりだね」

「元気してた?」


 そんな会話が飛び交う。やっぱり直接会って話すのは楽しいよね。みんなの笑顔が見えると、私も自然と笑顔になっていた。



 早速、各々が持ち寄った花火を取り出して、準備をする。持ってきていない人のことも考えて、みんな多めに持ってきていたので、大量の花火が集まっていた。

 女子たちは、それに火をつけて、ゆるゆると楽しみ始める。


「里美の花火、色変わるんだね。いいなー。私のと交換しよう?」「そっちもいいじゃん、なんか火花がぶわー一って出てきて。いいよいいよ、交換成立!」



「俺も一本欲しいな! 数本一気に火をつけると楽しいよな!」


 そう言って、健司が数本の花火をもって、それに火をつけた。一気に燃えて、その場が光に包まれた。ここだけ、昼間みたいな明るさ。それも綺麗に感じられた。


「花火って、多少当たってもいいように、低温になってるんだぜ。ほらほらー」


 健司は、女子たちからもらった花火をもらったというのに、恩をあだで返すかのように、火花をこちらに向けてきた。



「やめてよ。バカ! 熱いに決まってるじゃん!」


「おい、健司、やめろよ。みんなで楽しく遊ぶんだろ? ルール守れないなら、ここで花火をやる資格は無いぞ!」


 火岡君が、健司のことをきつく注意してくれた。火岡君って正義感が強い。友達だろうと、しっかり注意できる人ってちょっとカッコいいな。



「……わかったよ。ごめん」


 健司は、しょぼんとしてしまったが、ルールを守るのは大事だもんね。私は火岡君派だな。

 火岡君が、こちらに話しかけてきた。


「僕にも一本分けて欲しいな。その花火」


 私は、火岡君に花火を取ってあげた。


 その場に、火岡君もしゃがんで、下に向けて花火に火をつける。その場にいた女子も全員で、自分の花火に火をつけた。

 それぞれが、いろんな光を放つ花火。それを静かに眺めるのも楽しい。


 夏休み。友達と集まって、手持ち花火をするのって、やっぱり好きだな。

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