ハンサム

「先生は、重岡好きだよ。顔がハンサムじゃない?」

「ダメですよ、先生は! 生徒と付き合うとか、犯罪なんですからね? ……というか、ハンサムってなんですか?」


「えー?ハンサムを知らないの……? カッコいい顔の人のことをハンサムって言ったりするんだよ?」

「先生そんな言い方今はしないよ。カッコいい人はイケメンっていうんだよ?」


 パソコン部で、顧問の石川先生。先生ってば、一昔前の世代を生きているのか、いつも言葉が古かったりするんだよね。なにかしていると「やってるなうだよ」とかいったりして、『なう』ってつけたがるし。


「それって、古いですよ」って指摘すると、「今もツイッターって流行ってるんじゃないの?」とか言い出すし。今は『X』っていう名前に変わったんですよとか、説明するのも一苦労だったよ。


 そんな古い考えの石川先生が、私たちパソコン部の顧問の先生なの。パソコン部っていうのに、感性が古いってどういうことよって思うんだけれども。未だに「C言語は良いよー」って言ってくるし。


 夏休みでもアナログっぽく、パソコン部ルームに集まって部活動っていうのをしているんだ。今はやりのリモートワーク的な形で、部活動できないのかと聞いてみたんだ。けど、学校内のパソコンには外部からアクセスできないようになっているらしいんだって。セキュリティ意識は高いから、なんだかんだ侮れない顧問の先生ではあるんだけどね。


「それで、原田は重岡のどこか好きなんだ?」

「せ、先生! ストレートに聞きすぎですし、もうちょっと声のトーンを落としてくださいよ!」


 パソコンルームは肌が横に連なっていて、その机の上にパソコンが並んでいる。列が違うのであれば、ある程度話は届かないかもしれないけれども。同じ部屋の中に重岡がいるっていうのに、先生ってば。


 若い感じもするけれども、古いんだよな、なんか。黒いおさげ髪をしていて、丸い眼鏡を掛けて。身長も小さいし、顔も童顔。私の同級生って言っても通じそうな容姿ではある。


 なんだか、恋話にも乗ってくるし。男の子趣味も何だか私と合う気がするし。良い先生ではあるんだけどね。


「いつ告白するの?」

「ぶわっ!何を言ってるんですか先生!そんなことしないですよ!いきなりなんですか!」


「はっはっは。慌てるっていうことは、やっぱり好きっていうことなんじゃないの?素直になれってー。若い時代にはやらないで後悔するよりも、恥かいてでも後悔しないことが大事だよ?」


 そういう先生は、少しだけ大人に見えた。良く見ると、薄く化粧をしているんだよね。色っぽい唇をしているし。私が男の子だったら、ちょっと好きになっちゃうかもなって思うくらい。


「原田、先生の話聞いてたか?若いころの男は、顔が命だぞ!ハンサムをしっかりゲットしろよ!先生もハンサムが大好きだからな!はっはっは」

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