パピコ

 ああー、やばいやばいと思っていたけれども。

 私の電子マネーの中身が、すっからかんになりそうです。

 今月は、お小遣いを節約しないとだな……。


 スマホに映る電子マネーの画面をスワイプして確認してみる。それで何に使ったかわかるんだ。

 画面には、課金している履歴がずらずらと並んでいる。毎回1,000円ずつ課金してる。

 それも、数日おきに。ははは……。

 こんなに使っちゃったのか。記憶にないなー……。


 今月は、特に頻度が高い。

 おやつを買うよりも、課金だね。花より団子より、ゲームだ。

 スマホゲームで遊び過ぎちゃったからだね。


 暇が出来ると、ついついゲームで遊んじゃってね。

 遊んじゃうと、もっとやりたいーって思って、それでついつい課金しちゃう。

 そんな感じで、ついついが重なるって、良くあるよね。


 そうなると、私の口座はダイエットを始めるのです。

 夏に急激にダイエットを始めたとしても、成果なんて出ないはずなんだけれども。

 私の口座だけは、結果にコミットしてくるの。


 そんなスリムになる体質、私にも分けて欲しいくらいだよ。はぁ。



 お小遣いって、一期一会だね。



 そんな中でも、毎日部活動はある。

 そして、その帰り道には、小腹だって空くものです。


 バドミントン部は、男女一緒に練習をするんだ。うちの高校だと、男子よりも女子が強いから、一緒に練習したとしても、ちょうど同じくらいのレベル。

 それもどうかとは思うけれども、他の強豪の部活と体育館を分け合うと考えれば、バドミントン部は男女混合で練習しろっていうことかもしれない。


 そんな事情は分からないけれども。

 激しく動いた後は、やっぱり小腹が空くんだよ。


 部活帰りに、部員メンバーでコンビニに寄るのがいつものルート。

 そこで、みんな思い思いの小腹を満たす食料を買っていく。

 成長期だしね。

 あんな厳しい練習後は、何を食べても太らない気がするっていうもので、毎回なにかしらは食べているんだ。


 けれども、今日に限っては私は、なにも買わないで店を後にした。

 せめて、アイスくらい食べたかったけどね。

 私の口座の残高。痩せてるし。

 私も一緒に痩せよう。うぅ。



 なにも買うものが無い私は、コンビニの前で待つことにした。蝉の声を聞いてもお腹は満たされないけれども。日光に当たると、身体が栄養を作ってくれるって聞いたことあるからさ。

 インドア部活だから、せめてこんな時くらい日光を浴びようかなって。



 ……はぁー。アイス食べたい。



 コンビニで食料を買った部員がぞろぞろと出てくる。

 羨ましいな。アイス。


 そう思っていると、男子バドミントン部の原田が私の所へ来た。

 いつも私と張り合ってる男子。私がアイスを買うと、それ以上の高級アイスを見せびらかしてくる奴。



「今日の俺は、パピコだぜ! お前は?」

「……私は、ダイエット中」


「はは。見栄を張るのはやめとけって、全然痩せてないから、お前」

「は? うっさいなー。勝手に一人でパピコ食べとけよ!」


 そう言ったのに、原田はパピコを割って、私に渡してきた。


「お前、パピコ好きだったろ? やるよ。今月のお小遣いピンチなんだろ?」

「え、何で知ってるの……?」


「顔見れば、大体わかるだろ」


 そんなものなのかな。私の顔に出てるのかな?

 くれるなら、食べないこともないけども。


 他の部員も出て来たので、ぞろぞろと駅を目指して歩いて帰る。


 私と原田は、二人で並んで歩きながら、同じパピコを食べる。

 どうにも解せないけども。まぁ、パピコを半分くれるやつに悪い奴はいないか。

 ふふ。パピコって美味しい。やっぱり好きだな。

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