バブ

「今日のお風呂、バブ入れていいの?」


「いいわよー。疲れているでしょ?」

「うん。ありがとう!」


 家に帰ってくると、疲れている私のことを気遣って、母がバブをくれた。

 バブって、お風呂に入れる入浴剤で、炭酸のように泡がいっぱいでてくるあれのこと。


 顔に出さなくても、わかってくれている感じがして、私は母の気持ちが嬉しかった。

 疲れている日には、お風呂のバブを入れる。


 今日は、部活で遠征をした。

 夏の部活動は、とことん疲れる。


 ただでさえ暑い日の練習は疲れるんだ。

 体育館は蒸し風呂みたいに暑くなる。

 遠征だと、それに加えて、移動がある。


 暑い日の移動ってそれだけで疲れるし。

 いつもの学校じゃない慣れないところだと、余計につかれたりもする。

 そんなことを、きっと母は分かってくれていたんだ。


 私はバブを受け取ると、その足でお風呂へと向かった。


 荷物を脱衣所において、制服を脱いでいく。

 ふと、洗面所の鏡に映る自分が目に入る。


 とても疲れた顔をしていて、今日だけで十歳くらい歳を取ったように見えるな。

 暑いと歳を取るのも早くなるらしい。


 服を脱いで、浴室へと入る。

 もちろん手にはバブの袋を持っている。


 浴室に入っても、まだ湯舟には入らない。

 先に、頭と体を洗うんだ。

 すべて洗い終わってから、ゆっくりと湯船に入るんだ。


 急いで、先に洗うところを洗ってしまう。

 洗い終わると、バブを入れる前に湯船へと入る。



 お湯につかってから、ゆっくりとバブの袋を開けるの。

 バブを最初から最後まで楽しむには、この方法が一番だからね。


 袋からバブを取り出して、手の上に乗せる。

 お湯の中に入れるのは、まだなんだ。

 まずは、手のひらでのシュワシュワを楽しむ。

 手のひらが少しくすぐったくなるんだよね。ふふふ。


 こういう生き物みたいで楽しいんだよね。

 右手と左手で楽しんだら、両手で握りながら湯の中に入れる。


 手の中からシュワシュワーとバブが解けていく。

 それと同時に、お湯に色がついていく。

 今日のバブは、清涼感を求めた青色。

 濃い青色が広がっていく。


 なんだか、魔法使いになったみたい。

 青色のお湯を作る魔法なんだ。

 お湯の色が均等に染まったのを確認したら、パブの塊を腰の下あたりに落とす。



 溶けていく時のシュワシュワする炭酸が気持ちいいんだよね。

 腰のマッサージ。

 身体の向きを変えて、足の方へシュワシュワ。

 足の裏なんかも、ちょっと気持ちいいんだよね。


「はぁーー。生き返るー」


 声が浴室に響く。

 なんだか、貸し切りの露天風呂にいるみたいだね。

 極楽だなー。


 パプが溶けきるまでゆっくりと湯船につかる。

 これが、私のバブの楽しみ方。


 疲れた日には、お風呂にバブを入れる。

 私、バブって好きなんだ。

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