大正ロマン

 夏休みの自由研究っていうのがある。

 提出は自由って言われていたんだけれども、お母さんから絶対にやった方が良いって言ってきたんだよね。


 私も別にやりたくないわけじゃないから、簡単に「いいよー、やろう」って返事をしたの。

 そうしたら、お母さんは「もしもやるなら、美紀の好きなことを調べて良いからね。お母さんが全面協力するよ」って言ってきたの。


 久しぶりに、やる気に満ち溢れたお母さんを見た気がして。

 私にも、そのやる気が移った感じ。

 今年はやってやるぞ一。



 それで、私が選んだのは、時代ごとの服装の変化というのを調べようと思ったの。

 一番調べたいのは、日本。

 日本に絞って、時代ごとの変化を見ていこうと思うんだ。


 なんでそれを選んだかっていうと、最近聞いた、『大正ロマン』っていう言葉がすごくカッコよいなーって思ったからなの。

 ロマンって、言葉の通り、浪漫溢れるよね。

 ふふ。


 夏休みに、お母さんも会社が休みなるに合わせて、衣服博物館というところに見学にきた。

 そこには、世界中の衣服が年代順に並べられていた。


 各国の民族衣装というのもあって、私は目を奪われていた。

 目に入ってくる色が、全然違うことにびっくりした。


 国によって、布を染めるための植物が違うのか、全然色合いが違っているの。

 例えば、同じ赤でも、アジアの赤と、北欧の赤とは全然違う。


 時代によっても、発色が違ったりしているの。

 それは、色褪せたからとかじゃなくて、元から違うらしいんだ。

 それを見ているだけでも、とても楽しかった。



 その時代、その国に生きているような気がして。

 べたかった大正時代の衣服の展示場所に着くと、やはり色が目に飛び込んで来た。

 さっきまで見ていた赤色。

 大正時代の衣服だと、同じく『赤』って表現するものでも色が全然違う。


 大正時代の日本の落ち着いた赤色。

 少し暗めのシックな赤色。

 この時代に生きてなんかいないのに、なんだか懐かしい雰囲気がした。

 色を見るだけでも、その時代の性格っていうのを表しているような気がする。


 明治モダン。大正ロマン。昭和レトロ。平成はポップっていうのかな?

 それぞれに文化があったんだよね。

 今の時代は、目に訴えかけるような、自己主張が激しいような時代だって気がする。


 蛍光色だったり、強い色が多い印象。

 それも、個性を重視するように多用な色を使ったりして。


 一方で、大正時代の赤色。

 このくらいの落ち着いた色が多くって。

 今見てきた中で一番、心が落ち着くな。


 こういうのを、大正ロマンっていうのかもしれない。

 私は、大正ロマンが好きだな。

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