幽霊
幽霊というものを、皆さん信じているでしょうか。
信じるも信じないも皆様次第なのです。
私が体験した出来事についてお話いたしましょう。
怪談が好きな裕子が、そんな語り口で語り始めた。
「それは、夜の学校でのことでした。夏休みの宿題を学校に忘れたことに気付いた私は、夜の学校に忍び込んだのです」
裕子の話から、怖い話を語る会が始まった。
夏休みに、夜の学校に集まって肝試しをしようと計画されていた。
生徒たちだけで計画していたことだけれども、どうしても実現させたいと怪談大好きな裕子が率先して先生たちに許可を取りに行ったの。
そしたら、なんとオッケーをもらってね。
そんなことが許されるんだーってすごい驚いたんだよ。
条件を色々と提示したらしいんだ。
保護者となる大人も一緒に参加する。夜21時までには終わらせる。おやつは300円まで。
そんな細かいところまで決めたりしたの。すごい行動力だよ。
そこまでしてやりたかったっていうことかもしれないね。
「それで、女子トイレに行くと、鏡越しに……」
うぅー……怖い話……。
私、苦手なんだよなぁ……。
ちょっとトイレに行きたいけど、いけなくなってきちゃった。
けど、さすがに漏らすわけにはいかないから行くしかない。
私は、すっとその場を離れて、教室から出ていった。
夜の廊下には、闇が広がっている。
先の方が暗くて全然見えない。
あの暗闇から、何か出てくるんじゃないかって思っちゃうな。
ゆっくり歩いて、女子トイレへと向かう。
そして、トイレに入ると、何も見ずに個室に入ってしまい、用事を済ませる。
……ふぅ。間に合った。
切羽詰まっていたから急いで入れたものの。
用事を済ませて落ち着くと、恐怖感が段々と押し寄せてくる。
個室を出て、流しへと行く。
こういう時に鏡を見るっていうのは怖いよね。
鏡越しに、自分の後ろに何か見えた日には、私は漏らしてしまうかもしれないです。
出し切ってても、こういう時は出てくるものです。
うぅ……。
そうはいっても、鏡っていうのは見てしまうもので。
ちらっと鏡をのぞいてしまうと、後ろに女の子が経っているのが見えた。
「うわーーっ!!! 出た――――っ!!!」
さっき怪談話をしていた通りの、制服を着た女の子だよ、絶対。
驚いて、その場でしりもちをついてしまった。
どうしよやだやだ。
けど、足が動かないよ。力が入らない。
うつむいたまま、手を一生懸命振って追い払おうとする。
「お願い、助けてくださいーー!」
「そんなに驚かないでよ。私だよ?」
「……ほぇ?」
顔を上げると、そこにいたのは、さっきまで怪談話をしていた裕子だった。
「怖いだろうと思って、私もついてきたよ」
裕子の明るい笑顔。
なんだか、ほっとするよぉ。
「ありがとう。本当に怖かったよ」
「ふふ。ここのトイレはね、本当に幽霊が出るらしいからね。一人じゃ危ないよ?」
――ギギギー。
女子トイレ、一番奥の個室のドアが動いた気がした。
「今、何か動かなかった?」
「そう? ふふ、もしそうだとしたら、楽しいね。私、幽霊好きなんだ」
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