ウナギ
彼氏の
夏休みだっていうのに、毎日毎日、勉強勉強。
受験生っていうのは大変なのです。
別に、志望校のレベルが高いっていうことは無いのだけれども、それでも塾にでも行かないと大学入るのも難しいんだよ。
周りのレベルが高すぎるっていうのもあるよね。
みんな塾に行って当たり前という時代だから。
全員頭良くなっちゃったら、全員を合格にしてくれればいいのにね。
一生懸命頑張って勉強した人を不合格にしちゃうなんて、世の中不条理だよね。
なんて思いながらも、毎日塾で勉強。
そんな世界だったとしても、逞しく生きていけーっていうのがお父さんの教えだったりする。
午前中の授業が終わり、お昼休みになったので聡を誘ってお昼に行こうと思った。
「やっと休憩だね、お昼ごはん食べに行こうか?」
「そうだね。今日は、何にしようかな?」
「なんだか暑いから、さっぱりしたものが良いよね」
「確かに。けど、そういえば、今日は土用の丑の日らしいよ」
聡が、ウキウキしながら言ってきた。
これは、きっと、ウナギが食べたいっていうことだね。私も食べたいな。
土用の丑の日にはウナギを食べるものってお父さんに教えてもらったの。
この時期に食べるウナギは美味しいし、夏バテ予防にもなるから一石二鳥だって言ってね。
そんなお父さんの言葉に対して、お母さんにも同じことを言ってきたんだよ。
毎年そんなことが起こるから、私は土用の丑の日には、ウナギを食べるものだって思っていた。
「じゃあ、今日はウナギだね!」
「けど、ウナギって高くない?」
……あれ? なんで否定されちゃったんだ?
私は聡の意図を汲み取ったと思ったのだけれども?
聡は、少し悩んだ顔をしながら提案してきた。
「うどんでも食べようぜ」
「土用の丑の日にうどん? まぁいいけれども?」
こだわらないで、食べたいものを食べたらいいか。
せっかくなら、行事に沿ったものを食べたい気持ちもあったけれども。
聡は真面目な顔になった。
こういう時は、冗談とか言わないんだよね。
「土用の丑の日には、よくウナギを食べるっていうけれども。そもそも何を食べると良いかって言うと、スタミナの付く『う』の付く食べ物を食べるといいらしいんだ」
「ほぇ? ウナギだけじゃないの?」
「うなぎが代表されるけれども、うどんでも、梅干しでも良いんだ」
「そうなんだ、私初めて知ったよ。うちのお父さん、お母さんはウナギが大好きで、毎年ウナギだった。騙されてたのか……」
聡は笑って答えた。
「はは。良いお父さんお母さんじゃん。なかなか食べられるものじゃないし、そんな美味しいものを食べさせてもらえるなんて幸せな家族だよ」
「確かに、一理あるかも。ウナギ高いし……」
そうだったのか。
長年知らなかったけど、自分で調べないと分からないことがあるのかもしれないな。
もし今ウナギを食べなくても、多分今日の夕飯はウナギだと思う。
毎年同じだもんね。
私も実はウナギが好きだったりするんだ。
ふふ。
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