けん玉

 よく分からないブームって、いきなり発生するんだよね。

 無から発生することもあるけれども、狙ってそれを発生させる奴っていうのもいるんだよね。

 それも特定のやつって、決まってたりするんだけれども。


 今回も、あいつが起こした。

 いつも、どこからかブームを持ってくる和樹かずき

 今回和樹が起こしたのは、けん玉ブームだ。


 最初の始まりは、「楽しいぜー」って言って、和樹が一人でけん玉をし出したのが始まりなんだ。

 それだけだったら流行らないんだけれども、みんなもけん玉が出来るようにって、けん玉を何個か用意してたの。それが和樹のやり口で。


「楽しいからみんなも、やってみなよ!」って言って。それで、試しにやったら楽しいのよ。

 みんな我が我がと、やっていったりしてハマっていく人が続出したの。


 そんな中にも、なかなか出来ない子もいてね。

 そういう子は、楽しくなさそうにしてるわけなんだよね。

 けど、そんな時には、和樹が指導してくれていたんだよ。

 丁寧に、優しく教えてくれて。


 それで、みんなで少しづつ技ができるようになっていったの。

 段々できるようになったら、競い合うように技を見せ合うようになった。


 そんな感じで、けん玉が流行っていって、学校の中は空前のけん玉ブームになったのだ。

 みんな休み時間になると、自分のけん玉を取り出して、やっているの。

 けど私は、反抗的にやらないの。


 そんな風に拒絶していたけど、華子はなこがやってきた。


麻美あさみ、ちょっとけん玉、やってみてよ!」

「いや、私は全然出来ないよ……」


「いいから、いいから」


 みんなやるのが当たり前になってるから、断ってもやらされるんだよね。

 和樹め……。


 私の机に、けん玉が置かれた。


 これは、やるしかないかー……。


 座っている姿勢じゃ出来ないから、席を立つ。

 そして、けん玉を手に取る。


 少し足を開いて立って、膝が曲がるようにする。

 集中して、けん玉を構えて。


 けん玉って、一つ目のお皿に入れるのも、難しいんだよね。

 えっと、大皿って呼ぶんだっけ?

 和樹に教えられたな……。


 玉をスッと上に引き上げるようにするのが良いらしいんだ。


 ふぅー……。



「ヨイショッ!」


 紐を引っ張ると、玉がゆっくり上がる。

 宙に浮く玉。


 一定の高さまで上がるように力を入れたから。

 玉がその地点に着く前に、大皿をその下に構えればよいんだ。

 その動きだけは素早く。


 そして、お皿は地面と平行にする。

 そうすることで、玉は皿の上で止まる。


「あっ! 見て見て! ほらほら、これは入ったよ!!」


「おぉー、すごいすごい!」


 けん玉。

 ちょっと流行っているのもあるけども。

 一人で練習しちゃうくらいには、私も意外と好きなんだよね。

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