ひまわり

 高校の体育館へ行く渡り廊下に、ひまわりが咲いてる。そこは、いつも日当たりの良いところだから、すくすくと育ってる。

 まだまだ蕾のままだけれども、結構大きく育っている。


 部活が始まる前にそこを通るたびに、大きくなったなーって部活のメンバーで言い合ってるんだ。



 それである時から、人間の身長に追いつくくらい大きくなってて。部活の中でも小さい身長のメンバーと比べたら、ひまわりの方が大きかったりするんだよ。

 それに負けないように、いつも身長を比べたりしているんだ。

 まだまだ私は負けていないけれども、段々と夏が近づくにつれて、ひまわりの背が高くなってる。


「私はまだ負けてないかな? 良しセーフ!」

「いつか私を追い越すのかな? 私もセーフ!」

「まだまだみんな大丈夫そうだね。あとは姫子ひめこも比べてみる?姫子とギリギリいい勝負かもだよ!」

「頑張って!」


 私もひまわりの隣に立って、他のメンバーに比べてもらう。


「どうかな? まだ私が勝ってる?」

「うーん、ギリギリ姫子だね!」


「良かったー! セーフ!」


 私が大きくガッツポーズをすると、皆が笑っていた。


「「はははは」」



 やっぱり、負けるのって悔しいからね。まだまだ負けないんだから。


「それじゃあ、部活行こう!」



 ◇



 次の日の部活で渡り廊下を通ると、ひまわりの様子が変わっていた。

 毎日毎日、暑い日差しを受けて、とうとう花が開いたようだった。


 パッと開いていると、印象がかなり違う。

 いままで、ひょろっと長い印象だったものが、大きな人間のように感じられた。


「すごいよー! みんな見て見てひまわり咲いているよ! それも大きいい花」

「本当だ! すっごーい! これ! おっきーーー!」


 私も近くによって見てみると、その大きさを実感できた。花開いているから、なんだか可愛く思えるし、やっと会えたっていう感じがしちゃう。

 ずっと成長を見守っていたけれども。

 初めましてだね。ひまわりちゃん。


「ひまわりって花が咲くと、これ以上大きくならないのかな?」

「そんなことあるのかな? ちょっと比べて見てよ!」


「私は、ギリギリ勝ってる! セーフ!」

「私も、大丈夫かな? セーフかな?」


「あれ、ちょっと待って、姫子もうちょっと、ひまわりに近づいてみて!」


 私が近づくと、みんな私とひまわりを見比べた。

 ジーっと凝視して、どっちが背が高いかを比べている。


「もしかして、姫子と全く同じ背の高さかも!」

「えぇ! そうなの!? 勝ってもなく、負けても無く一緒なの?」



 私はひまわりの方を見ると、ちょうど顔が合う。

 そこにあるのは、大きく笑うように咲いている花だった。


 笑いかけてくるその子は、とても楽しそうで。

 いつも部活前に話しかけていたから、仲間のようにも感じられる。


「今度から、その顔で私たちを応援するんだよ!」


 ふふ。渡り廊下のひまわり。ひと夏だけの関係かもしれないけれども。私たちの仲間。

 もちろん、大好きだよ。

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