美容師

 今日は中学校の授業の一環で、職業体験というものをしてくる。

 事前にアンケートをされて、自分がどの職場を体験したいかっていうのを決めるんだ。


 主に、街にあるお店などを中心に職業を体験しに行く。

 男子に人気があったのは、警察だったの。

 そんなに正義感が強いのかー?っていう男の子もみんな警察を体験したいらしい。

 やっぱり、警察官は憧れの職業なのかな?


 女の子で多かったのは、幼稚園の先生。

 それって、楽しそうだよね。


 いっぱいの子供に囲まれて。

 妹とか弟と遊んでいるみたいな気分だよね。多分?


 体験できるのはいろんな職業があったんだよ。

 農家さんとか、八百屋さんとか、スーパ一とか、鉄道関係のお仕事もあったの。


 それに対してみんな希望を出して選んでいったんだけれども。

 私が選んだのは、それらとは違うの。

 私が選んだのは、美容師さん。ふふ。


 やっぱり私のあこがれの職業だからね。

 今のうちから体験してみたいって思っていたんだ。


 美容師さんってやっぱりすごいんだよね。

 髪型一つで、女の子って可愛くなれるんだよ。可愛いは作れるわけなの。


 それを作り出す人なんて、もうそれだけで私の中ではカリスマな訳で。

 いつも私が髪の毛を切ってもらうだけで、すごいなーって思っているんだ。


 こんな私でも、髪を切った次の日は可愛いねって言われるしね。ふふ。

 そんなことを思っていると、職場体験する美容室の前まで来ていた。

 街の美容室。


 私が言っているところとは違うけれども、落ち着いた感じの綺麗なお店。

 ドアを開けてみると、ベルが鳴った。


 ――コロンコロン。


 耳に心地よい可愛い音がする。

 ドアの上の方を見ると、可愛い小さい鈴がついていた。それが鳴っているようだった。

 そんな音を聞くだけで、このお店が良い所だって想像がつくな。


 よし、私の体験開始だよ。


 そう思って前へ向き直ると、目の前に美容師さんが来ていた。

 少し明るめの茶髪をしたお姉さん。

 セミロングくらいの髪をしていて、袖カラーっていうのかな?毛先の方だけ金髪っぽく光っている。

 とってもオシャレ。


「あ、あのっ! 今日は、よろしくお願いしますっ!」

「はい。中学校から聞いているよー。そんなに固くならなくて大丈夫だからね」


「はい!」


 お姉さんは、店の中の方まで案内してくれて、器具の説明をしてくれた。


「実際に人の髪の毛を切るには、免許がいるからね。今日はシャンプーの体験っていうところだね」

「はいっ! 頑張りますっ! 私、美容師さんになることが夢なんです!」


 私がそう言うと、お姉さんはにっこりと笑顔を返してくれた。


「美容師さんはね、腕も必要だけど、トーク術も必要だったりするからね。そんなところも体験して言ってね!」

「はいっ! お姉さんに教えてもらって、頑張ってみますっ! 私、美容師さんって、とっても好きなんですっ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る