綺麗なお腹

 今年の文化祭の出し物は、K-POPのダンスをやることに決まった。

 男子が見たいからとかじゃなくて、どちらかというと、女子の意見が強かった感じ。


 男子は子供っぽいから、「俺は焼きそばを食べたいんだー!」とか、「チョコバナナが良いだろー!」とかいう意見ばかりだった。なんだか、食べることばかりを考えてるんだよ。


 けど、模擬店をやるっていうのは、色々大変らしくって。

 準備も大変だし、当日の料理を作るとか、衛生管理とかもすっごく大変っていう意見が出た。

 男子が「これやりたい一!」、とか「絶対頑張る一!」って言ってても、結局女子の手を借りることが多いんだよって。


 結局男子は口だけしか出さないからダメという理由を出して、女子が勢いよく却下していた。

 男子が言い返してこなかったところを見ると、本当にただ食べたいだけだったのかもしれない。


 それで、模擬店を却下したら何をやるかという議論があって。

 その中で出てきたのがK-POPダンスなのだ。

 私はあまり乗り気じゃなかったものの、大多数の女子がやりたがっていた。


「K-POPダンスって、ダンスの出し物をするっていうことだよね?」

「そうそう。ノリノリで良いよね。すごく楽しそう」

「意外と難しくないんだよ。わかりやすい動きをしてるんだよ」

「ファッション的にも、すっごい可愛いし。お腹出したりするの良いよね」



 女子たちを中心として、ノリノリで話し合いが行われている。

 このままだと、K-POPダンスをやることに決まっちゃいそうだけれども。

 ちょっと、私は抵抗あるんだよなー……。


 なんでかというと、やっぱりお腹を出すっていうところに、抵抗があるよね。

 普段見せない身体の部位なんだよ?水泳の授業だって、お腹は見せないんだよ。

 いつだってお腹は隠しているし。

 私、寝るときには、腹巻だって巻いて寝てるんだよ。

 だから、お腹を出すファッションって勇気がいる。


「男子もお化粧したりね」

「いいね、いいねー!」


 KPOPダンスをやることに話が進んでる。これはもう止められないかもな一……。


 お腹を出す?

 うーん、恥ずかしい……。


 そう思っていると、一人の女子が制服のシャツを少しまくって、お腹を出し始めた。


「こうやって、制服でやるっていうのはどう? それっぽくない?」

「確かに! 衣装を用意しなくても、そのまま制服で踊るっていうのもありだよね」


 あぁ、みんな綺麗なお腹。

 隣の席の美智子みちこに、少し聞いてみる。


「お腹出すのってどう思う? 私は、ちょっとなーって……」

「えー、そうなの? 試しに見てせてみてよ」


「えぇ……。うーんちょっとだけだよ?」


 こっそりと、シャツを出して、わき腹を見せる。

 別に見栄を貼ろうって考えはないんだけど、ちょっとへこませちゃってるかも。


「美智子、これは緊張でへこんじゃってるだけだからね」

「大丈夫だよ!全然痩せてる!


「えー。いや、くびれとか無いんだよ」

「全然いいよ! ちらっと見えるおへそも、良い感じだし! その綺麗なお腹は良いよー。私好きだよ!」

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