七転び八起き

 炎天下の校舎。

 建物の中にいても、貫通してくる暑さっていうのは、どうなっているんだろう?


 不法侵入で訴えたら、勝てるよね。

 学校に変な奴がいるんですーって。


 春になると現れる変質者とか、校庭に迷い込んでくる犬よりも、夏の暑さの取り締まりを強化すべきだよ。

 そんな文句を言っても、何も始まらないわけだから、私は文句も言わずに頑張るわけだけれども。


 けど、これで何回目なのかっていう追試を受けさせられている。

 普段の授業とは別に、土曜日に高校まで来て勉強をするのって、それってなんだか優等生がするようなことだよ。


 今回で終わって欲しいー。

 また再追試はやだよ一。


 そう祈りながら、今日も最後の問題を解き終わった。



 ……ふぅ、見直しも完璧にしなと。

 何回も同じようなところでミスっていたら、学習能力低すぎるからね。


 高校で留年しちゃうなんてことしたら、私は友達の後輩になっちゃうんだよ。

 それは、絶対に嫌だから!


 よし。全部オッケー。

 これで私の追試が終わるはず。


 教卓にいる先生に、答案用紙を渡す。



「おぉ一、安住あずみ。早いな。さすがに追試慣れたか?」

「そんなこと言わないでくださいよ。追試に慣れるってなんですか。そんなの絶対に嫌ですよ」


「ははは。そりゃそうだな」



 先生は、その場で私の答案用紙を採点していく。

 私はその様子を黙って見守る。


 〇、〇、×、〇、×、×、×、×、×、×。


 あれ、なんだか後半、×多くない?


「あ、こりゃダメだ。安住、また追試だな」

「えええぇーー! また追試ですかぁーー!!」


「しょうがないだろ、それが決まりだから」

「私は、いつになったら解放されるんですかー」


 またダメだったか。

 私は、ずっと失敗続きだよ。


 暑いっていうだけじゃなくて、もうそろそろ精神的にもまいっちゃうよ。



「まぁ、けど、前回よりも、いい感じに問題解けてるぞ!」

「気休めは良いです。そんなことするなら合格にしてくださいよ」


「それじゃあ、お前のためにならないだろ?」


 また、これだよ。

 私のためってなによ。

 この追試地獄から抜けさせてくれるのが、私のためじゃないの?

 うー……。


「安住は、一番の頑張り屋だからな」

「そうなんですよ、頑張ってるのに全然合格できない。もう泣きそうですよ。諦めたい」



 先生は、私に答案用紙を返すと、私の目を真正面から見つめた。


「今頑張れている奴は、これからもずっと頑張れるからな。将来、もっとつらい現実もあるけど、それでもめげない心を今養えてるんだぞ!」

「なんですか、それ。そんなことないでしょ」


 先生は、まじめな顔を少し崩して微笑んでくれた。


「次のテストは、きっと大丈夫なはずだぞ。七転び八起きだ! 先生の好きな言葉を安住に送るよ!」

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