うどん

 今日のお昼は、自分で勝手に食べてって、お母さんに言われたの。

 中学生にもなれば、好きに作って食べろっていうお母さんの意思の現れ。

 放任主義なお母さん。


「面倒くさがり屋」というと怒られちゃうので。

 ストレートには言わないようにしてるんだけどね。


 お母さん曰く、「自主性を重んじている」と言ってたけども。

 自立できるようにあえて、お母さんは手を抜いてくれているらしい。

「手を抜く方が大変なんだからね」って言ってた。


 そんなことを言われたけども、その時は自然と右から左へと言葉を受け流してましたよ。

 それがこれからは日常になるんだろうな。

 私も午前授業になったから、夏休みまでずっとだよ。

 はぁ……。頑張ろうっと。


美紀みきー、昼ご飯作るの? 私のも一緒にお願い!」

「えぇー! お姉ちゃんは自分で作ってよ!」


「いやさ、美紀が自立できるようにっていうのを手伝ってるのよ」

「お姉ちゃんまで、お母さんみたいなこと言ってー!」


「ふふふ」


 笑いながら、リビングテーブルへと座ってしまった。

 そして、スマホをいじり始める。


 私が二人分作るしかないか。

 私が作れるものと言えば。



「お姉ちゃん、うどんでいい?」

「おけだよー! ありがと!」


 ちゃんと聞いてるのか、聞いてないのか。

 どちらかわからない返事をしてくるし。まあいいや。


 私はちゃんと聞いたもんねー。



 台所。

 とりあえず、鍋に水を入れて。それをIHヒーターの上に置く。

 まずは湯を沸かす必要があるからね。


 今から私が作るのは乾麺タイプのうどん。

 これが美味しいんだよね。

 それでいて、簡単にできるっていうのをお母さんを見て学んだからね。


 湯が沸けるまで、スマホをいじって待つ。

 今日の無料漫画を読まないとね。


 そして、湯が沸けたら、うどんを鍋の中に。

 ここからも、湯で時間が長いんだよね。

 13分間も煮る必要があるんだよ。


 まぁここからは、タイマーをセットだけしちゃえば、しばらくここを離れられるんだ。

 一旦リビングテーブルへと行く。


 お姉ちゃんは私に気づいていないみたい。

 何を見ているのかなーと、スマホを除いてみる。


 あ、彼氏とのメールしてる。

 なにを話題にしているんだろうな?

 ふふー。


 なになにー。


「今日はね、妹がお昼ご飯作ってれてるんだよー」

「へぇ、そうなんだ! 良い妹だね」


「でしょー! 私に似て可愛いし。なんでもできるんだよ。自慢の妹!」

「妹ちゃんは、良いお嫁さんになりそうだね!」


 ふふふ。お姉ちゃんったら。

 自慢の妹って言ってくれてるんだ。

 なんだか嬉しいな。


 私はそっと台所に戻る。

 からかおうかと思ったけど、満足したからいいや。


 ――ぴぴー!


「よーし、お姉ちゃんできたよー!」

「ありがと―!」


「お姉ちゃんも好きな、うどんだよ! 召し上がれ!」

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