VTuber

 高校二年生の夏、友人の美咲みさきに誘われて初めてVTuberの世界に足を踏み入れた。


「一緒にVTuberの配信を見よう」


 初対面で、最初の一言がこうだった。

 目を輝かせながら言ってくるから、「うん」としか返事が出来なくて。

 昼休みに、スマホで一緒にVTuberを見ていた。


 後から分かったのが、美咲は、クラスでも有名なVTuberファンだったの。

 そんな彼女が私に話しかけてきたことがきっかけで、私はVTuberの世界に足を踏み入れてしまったらしい。

 そこから美咲は、最新の配信やイベント情報を教えてくれるようになった。



「ねえ、今日の放課後、うちに来ない? 推しのVTuberが新しいゲーム実況するんだよ!」


 目を輝かせて、美咲は言ってくる。

 私は特に予定もなかったので、軽い気持ちで「いいよ」と答えてしまった。


 正直なところ、VTuberにはあまり興味がなかったんだけれども、美咲の楽しそうな顔を見ていると、少しだけ興味が湧いてきた。


 放課後になると、約束通り美咲の家に行った。

 家に着くなり、美咲は早速パソコンを立ち上げ、YouTubeを開いた。画面には可愛らしいアバターが映し出されていて、そのアバターがまるで生きているかのように動き、話し始めた。


「この子が私の推し、桜井リナちゃん!」と美咲が紹介してくれた。リナちゃんは明るく元気な声で、視聴者と楽しそうに会話をしていた。確かに可愛い……。


「リナちゃんって、可愛いね。こうやってリアルタイムで動いて受け答えしているのを見ると、本当に生きてるみたい」


「そうでしょ? リナちゃんはね、ただのアバターじゃなくて、中の人がちゃんといて、その人がリナちゃんを演じてるんだよ。だから、リナちゃんの個性がすごく出てるんだ」



 VTuberには中の人がいるっていうのは聞いたことがあるけれども。本当にそうなっているんだ。



「VTuber業界って、実はすごく競争が激しいんだよ。人気が出るためには、ただ可愛いだけじゃなくて、トーク力やゲームの腕前、歌の上手さとか、いろんなスキルが必要なんだ!」


 リナちゃんの配信を見ながら、美咲は他のVTuberについても教えてくれた。


「この子は、ゲーム実況が得意な青葉ユウちゃん。彼女の実況は本当に面白くて、いつも笑っちゃうんだ。それから、この子は歌が上手な白雪ミクちゃん。彼女の歌声は本当に素晴らしくて、ライブ配信はいつも大人気なんだよ」


 美咲の説明で、私も段々とVTuberの魅力がわかってきたかも。それぞれのVTuberが持つ個性やスキルがあって。それで、ファンサービスと言うのか、視聴者と築く絆がすごくある。


「美咲、私もVTuberをもっと知りたいな」


 私がそう言うと、美咲は嬉しそうに笑った。


「本当? じゃあ、今度一緒にリナちゃんのライブ配信を見ようよ! それに、他のVTuberもたくさん紹介するから、一緒に楽しもう! 私の好きなVTuber」

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