図書館で過ごす時間

 私と有希子ゆきこは、勉強するために図書館へと来ていた。


 中間テスト前だから、部活も休みだし。授業時間もいつもより短い時間で、早く帰れるの。

 かと言って勉強はしなきゃダメだから、本当の意味での休みはないんだよね。

 せめて涼しい場所で勉強しようっていうことで、図書館のスペースを使わせてもらって勉強をしている。

 図書館は静かで過ごしやすい。勉強がとても捗っていた。私の体感的には、かなりばっちり進んでいる。



 しばらく二人で黙って勉強をしていたが、有希子は息抜きのためか、立ち上がって身体を伸ばしてストレッチを始めた。

 右に左に身体を捻ったと思ったら、私の方を向いて、うんと頷いた。

 なんのことかさっぱりだけれども、ニコニコした顔で歩き出して、本が並ぶ棚の方へと進んで行った。


 きっと勉強が飽きたんだな、ありゃ。

 気持ちはわかるけれども。

 私はもうちょっと勉強進めちゃおうかな。


 しばらくうろちょろしていたのか、5分ほどしたら有希子は戻ってきた。

 やっぱり笑顔をこちらに向けてくる。


咲良さくら、これ知ってる?」


 有希子の手に持っていたのは、絵本だった。

 私も知ってる絵をしたもの。

 星の王子さまだ。


「私ね、この本がすごい好きなんだ。昔家にあったけど捨てられちゃってね。久しぶりに見つけたから持ってきた!」


「勉強はどうしたの?」なんて聞くのは野暮だから、私も笑顔を返しておいた。

 有希子は、ニコニコとしながら星の王子さまのページをめくっていく。


「この話って色々難しいんだよね。何を言いたいんだろうなーって、昔から考えてるんだよね。でも、イマイチよく分からなくて」

「その絵本ってそんなに深いこと言ってるの?」


 うんと、有希子は頷く。


「よく言われるのがね、この本で言ってるのは、『大切なものは目に見えない』っていうんだよ」

「へぇー、確かに。言われてみたら、そんな気がするね!」


「でしょ? けど、大切なものは目に見えないって言われても、それを直接書かれると、その先があるんじゃないかって考えちゃうんだよね」

「どういうこと?」


「大切なものが目に見えないなら、ここに書かれてること以上に大切なものがあるんじゃないかーって考えちゃうの」

「なるほどねー。じゃあ、例えば、友情とかって大事じゃない?」


「それは、確かに大事だね。あと、この本がまた読めたって言う図書館だって、意外と大事かも!」

「それもそうかもだけど、見えないものとかが大事なんだよきっと。私達二人が出会えたこととか!」


「なんか咲良、カッコイイこと言うじゃん!」


「「はははは」」



 そんな風にして、二人で過ごす図書館での時間。

 大人になってから振り返ると、実はそれが一番大切なものかもしれないけどね。


 私は、有希子と図書館で過ごす時間が一番好きだよ。

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